ばち指の発症にはPGE2増加が関与している可能性

 当院は呼吸器専門病院であるため、前向き試験が組めるほどに大量のばち指患者さんがいます。JTOから、少し小さめの論文ですがPGE2の増加との関連性についての報告があります。ただし、結語に書いてあるシクロオキシゲナーゼ2阻害薬であるセレコキシブの肺癌への効果は、NVALT-4試験の結果から否定的です(JCO November 10, 2011 vol. 29 no. 32 4320-4326)。

NVALT-4試験:進行NSCLCに対するセレコキシブに生存上の利益はなし

 最近個人的には、慢性好酸球性肺炎の患者さんや、粟粒結核とAIDSを合併した患者さんにばち指がみられました。どういうメカニズムなのか非常に興味があります。

Kozak, Kevin R, et al.
Elevation of Prostaglandin E2 in Lung Cancer Patients with Digital Clubbing
Journal of Thoracic Oncology, in press


背景:
 紀元前15世紀に認知されて以来、ばち指:digital clubbingの原因はまさに医学のミステリーであった。われわれは、プロスペクティブ試験においてその病態生理を解き明かしたい。
 ばち指や肥大性骨関節症(HOA)の病態疫学において、シクロオキシゲナーゼ代謝、プロスタグランジンE2などの報告がある。たとえば、プラスタグランジンE1治療は、チアノーゼを有する心疾患の小児や肝疾患を有する成人にHOAをもたらすとされている。また、15-ヒドロプロスタグランジン脱水素酵素のエンコード遺伝子の不活化変異が原発性HOAに関連しているという報告がある。さらに、尿中PGE2代謝物である11-hydroxy-9,15-dioxo-2,3,4,5-tetranor-prostane-1,20-dioic acid (PGE-M)がHOAを有する肺癌患者で増加することが報告されている。
・Uppal S, et al. Mutations in 15-hydroxyprostaglandin dehydrogenase cause primary hypertrophic osteoarthropathy. Nat Genet 2008;40:789 –793.
・Ueda K, et al. Cortical hyperostosis following long-term administration of prostaglandin E1 in infants with cyanotic congenital heart disease. J Pediatr 1980;97:834–836.


方法:
 Massachusetts General Hospital Thoracic Oncology Clinicにおいて、ばち指の有無を問わず新規診断の病期III/IVの肺癌患者において、尿中PGE-Mを測定した。29人の患者が登録された。
 薬物学的交絡因子を除外するため、アスピリン、NSAIDs、ステロイド内服患者は除外された。腎不全や全身性炎症性疾患患者も除外された。ばち指はSchamrothテストで内科医によって診断された。重要な点であるが、ばち指の有無は尿検査の前に判断された。尿検査は、肺癌治療の前に採取された。

結果:
 ばち指のある患者では、尿中PGE-Mが有意に高かった。ばち指のある患者では、尿中PGE-M中央値はばち指の無い患者に比べて2.3倍高かった。Fisherの正確検定では、喫煙、性別、病期、組織のバランスについてばち指の有無での差はなかった。
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結論:
 肺癌患者におけるばち指には、PGE2の増加が関連している。シクロオキシゲナーゼ2阻害薬による肺癌の潜在的利益が報告されているため、この結果との関連が示唆される。

by otowelt | 2012-10-25 00:47 | 肺癌・その他腫瘍

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