肥満低換気症候群による急性II型呼吸不全にNPPVが有効

肥満低換気症候群による急性II型呼吸不全にNPPVが有効_e0156318_101902.jpg 肥満低換気症候群に伴う急性II型呼吸不全にNPPVが有効であるという論文です。

Andres Carrillo, et al.
Non-invasive Ventilation in Acute Hypercapnic Respiratory Failure due to Obesity-Hypoventilation Syndrome and COPD
Am. J. Respir. Crit. Care Med. October 26, 2012 rccm.201206-1101OC


背景:
 非侵襲性換気(NIV)は、COPD患者における高炭酸ガス血症を伴う急性呼吸不全:acute hypercapnic respiratory failure (AHRF)に有効である。しかしながら、肥満低換気症候群(OHS)によって同様のエピソードをきたした場合のエビデンスはない。
 そこでわれわれは、OHSとCOPDによって起こったAHRFエピソードに対してNIVの効果を検証した。

方法:
 われわれはプロスペクティブにAHRFをきたした716人の連続した患者(OHS:173人、COPD:543人) を登録した(動脈血液ガスpH <7.35 およびPaCO2 >45 mmHg)。2群とも同じ方法でNIVを導入した。われわれはNIVによる治療成功を、挿管回避、24時間時点でのICU生存とした。院内生存者は1年後まで追跡調査された。

結果:
 両群とも同等の呼吸性アシドーシスであった(動脈血ガスpH, 7.22±0.08; PaCO2, 86±21 mmHg)。OHSのある患者は高齢であり(74±11 vs. 71±10 years, p<0.001)、女性が多く(p<0.001)、NIV後期失敗率や(p=0.037)、院内死亡率が低かった(p<0.001)。またOHS群は1年生存率が高かった(オッズ比1.83, 95%信頼区間1.24-2.69, p=0.002)。しかしながら、交絡因子によって補正したところオッズ比率は1.41(95%信頼区間0.70-2.83, p=0.34)と有意差が認められなかった。同様に、NIV失敗率でも有意差を消失させた(p=0.11)。
 COPD患者の間では、肥満はNIV失敗率の減少や病院への再入院に相関していた。

結論:
 OHSのある患者ではAHRFに対してNIVで治療されるべきである。これはCOPD患者が受ける利益よりも大きいかもしれない。
by otowelt | 2012-10-31 08:04 | 呼吸器その他

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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