ベンゾジアゼピンは市中肺炎の発症・死亡リスクを上昇

e0156318_13183343.jpg誤嚥リスクが高そうな高齢者の患者さんにベンゾジアゼピンをどんどん使おうとはさすがに思いませんが。

Eneanya Obiora,et al.
The impact of benzodiazepines on occurrence of pneumonia and mortality from pneumonia: a nested case-control and survival analysis in a population-based cohort
Thorax doi:10.1136/thoraxjnl-2012-202374


目的:
 ベンゾジアゼピンは、敗血症や重症患者における感染のリスク、死亡リスクの増加と関連していると考えられている。そこで、われわれはベンゾジアゼピンの使用が肺炎の死亡にどのくらい影響を与えるか調べた。

方法:
 29697人のコントロール群と4964人の市中肺炎の患者によるコホート内症例対照研究が、イギリスプライマリケア患者データベース(2001年~2002年)を用いて行われ、ベンゾジアゼピンと肺炎の関連性についてロジスティック回帰による解析をおこなった。市中肺炎4964例におけるベンゾジアゼピンの死亡率への影響を同定するためにCox回帰分析が用いられた。結果は補正オッズ比、補正ハザード比、95%信頼区間で提示した。

結果:
 ベンゾジアゼピンの曝露は市中肺炎のリスクを増加させた(OR 1.54, 95% CI 1.42 to 1.67)。ジアゼパム(セルシン®、ホリゾン®)、ロラゼパム(ワイパックス®)、テマゼパム(レストリル®)、ゾピクロン(アモバン®、ゾピクール®)が市中肺炎の発症リスクを増加させたが、クロルジアゼポキシド(バランス®、コントール®)は増加させなかった。
 それぞれの補正オッズ比については、ジアゼパム1.49 (95%CI 1.34 to 1.65)、ロラゼパム1.65 (95%CI 1.24 to 2.20)、テマゼパム1.43(95%CI1.29 to 1.59)、ゾピクロン1.98 (95%CI 1.49 to 2.64)、クロルジアゼポキシド1.19 (95%CI 0.88 to 1.62)。
 また、ベンゾジアゼピンは市中肺炎と診断された患者において、30日死亡率(HR 1.22 (95% CI 1.06 to 1.39))を増加させた。 現在のベンゾジアゼピン使用(HR1.35 (95%CI 1.10 to 1.64))、最近のベンゾジアゼピン(HR1.36 (95%CI1.04 to 1.79))も30日死亡率に寄与した。
 また、ベンゾジアゼピンは長期死亡率(HR 1.32 (95% CI 1.19 to 1.47))を増加させた。現在の使用、最近の使用、過去の使用すべてにおいて有意なハザード比上昇がみられた。
 ジアゼパム、クロルジアゼポキシド、ロラゼパム、テマゼパムは長期死亡に影響を与えた。
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Discussion:
 過去の報告では、GABA受容体の抑制により免疫細胞の機能低下が示唆されている(Anesthesiology 2011:A765.)。例えば集中治療領域におけるミダゾラムは、非GABA系の鎮静薬と比較すると二次性感染症のリスク上昇が示唆されているが(JAMA 2009;301:489–99.)、感染自体には差はみられなかったという別の報告もある(JAMA 2012;307:1151–60.)。
 この論文における選択バイアスの可能性は拭い去れない上、‘急性下気道感染症’(ALRTI)の疾患コードが組み込まれており、厳密に肺炎リスクと関連しているかどうかは定かではない。しかしながら、臨床的に肺炎であろうと推定される疾患スペクトラムのリスク上昇と考えてよいだろう。

結論:
 ベンゾジアゼピンは市中肺炎による死亡リスクを上昇させる。この仮説は、ベンゾジアゼインの安全性プロファイルに対するさらなる臨床試験の必要性を促すものである。

by otowelt | 2012-12-07 12:31 | 感染症全般

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