喀痰の色は有用なのか?

 喀痰の色は、感染症の存在診断に有用であるとされています。しかしながらそのエビデンスは少なく、教科書に記載されている内容も多くがエキスパートオピニオンです。現時点で、喀痰の色についてどのようなことがわかっているでしょうか。

・喀痰の色
 よく患者さんが「黄色の痰が出ました」「痰は緑色でした」と報告してくれることがありますが、これはあまり信頼性がないとされています。216人の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者さんで、患者さんが報告した喀痰の色と、客観的に解析した喀痰の色で細菌の存在診断を検討された試験があります。これによれば、客観的な解析の場合オッズ比9.8(95%信頼区間4.7~20.4、p<0.001)・感度90%・特異度52%、患者さんの報告はオッズ比1.7(95%信頼区間1.0~3.0、p=0.041)・感度73%・特異度39%という結果でした。
Daniels JM, et al. Sputum colour reported by patients is not a reliable marker of the presence of bacteria in acute exacerbations of chronic obstructive pulmonary disease. Clin Microbiol Infect. 2010 Jun;16(6):583-8.
 急性咳嗽をきたした患者を集めた報告では、黄色~緑色の喀痰は細菌感染の診断に対して感度79%・特異度46%という報告もあります。
Altiner A, et al. Sputum colour for diagnosis of a bacterial infection in patients with acute cough. Scand J Prim Health Care. 2009; 27(2): 70–73.
 同様のスタディが他にもあり、緑色や黄色、鉄さび色の喀痰は、白色、無色透明の喀痰に比べると有意に細菌培養陽性であったという報告があります。
Johnson AL, et al. Sputum color: potential implications for clinical practice. Respir Care. 2008 Apr;53(4):450-4.  
 最も大きな試験では、COPDの急性増悪の患者さんで、色について記載のあった喀痰検体4003を用いた試験があります。細菌培養が陽性であった検体のうち、多くは黄色(56.7%)あるいは緑色(29.8%)でした。Haemophilus influenzaeが白色以外において、最も多い培養微生物でした。Klebsiella pneumoniaeは、教科書通りやや黄色がかった喀痰が多いように思います。
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Miravitlles M, et al. Sputum colour and bacteria in chronic bronchitis exacerbations: a pooled analysis. Eur Respir J. 2012 Jun;39(6):1354-60. より引用
 ちなみに喀痰だと常在菌の混入があるため信頼性が乏しいという意見もあります。PSB(protected specimen brush)でおこなわれたスタディでは喀痰の膿性色は感度89.5%・特異度76.2%で細菌培養陽性が予測可能でした。
Soler N, et al. Bronchoscopic validation of the significance of sputum purulence in severe exacerbations of chronic obstructive pulmonary disease. Thorax. 2007 Jan;62(1):29-35.

 教科書的によく記載されている喀痰の色は以下の通りです。
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1) Heffron R. Symptoms of lobar pneumonia in Pneumonia with special reference to pneumococcus lobar pneumonia. Harvard University Press, Cambridge, Massachusetts, 1939. p. 501.
2) Wen-Chien Ko, et al. Community-Acquired Klebsiella pneumoniae Bacteremia: Global Differences in Clinical Patterns. Emerg Infect Dis. 2002 February; 8(2): 160–166.
3) Fujita J, et al. Mechanism of formation of the orange-colored sputum in pneumonia caused by Legionella pneumophila. Intern Med. 2007;46(23):1931-4.
4) Conlan AA Massive hemoptysis. Review of 123 cases. J Thorac Cardiovasc Surg. 1983 Jan;85(1):120-4.
5) Johnston H, et al. Changing spectrum of hemoptysis. Underlying causes in 148 patients undergoing diagnostic flexible fiberoptic bronchoscopy. Arch Intern Med. 1989 Jul;149(7):1666-8.
6) Luisada AA, et al. Acute pulmonary edema; pathology, physiology and clinical management. Circulation. 1956 Jan;13(1):113-35.


・喀痰の膿性と炎症の関係
 喀痰の色に膿性が増すと、その中にある炎症細胞の増加が観察されます。
 たとえば、黄色~緑色の膿性度合いと含有好中球の数に比例的な関係があることが知られています。喀痰の黄色~緑色は感度94.4%・特異度77.0%で喀痰細菌培養の予測が可能であるとされています。また、治療によって喀痰色が改善することがわかっています。
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Stockley RA, et al. Relationship of sputum color to nature and outpatient management of acute exacerbations of COPD.Chest. 2000 Jun;117(6):1638-45より改変引用(喀痰色スコアが高いほど黄色~緑色が増します)

痰の中に含まれる好中球ミエロペルオキシダーゼ、IL-8、白血球エラスターゼの量や活性が高いと喀痰の緑色が濃いという報告もあります。

by otowelt | 2012-12-10 11:23 | 感染症全般

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