終末期癌患者の脱水補正は脱水関連症状や生存を改善せず

 今年もよろしくお願いします。
 終末期癌患者さんには1日500ml程度の輸液でよい、というのが世界的なコンセンサスとしてあります。ただ、脱水を合併した終末期患者さんには輸液を多めに投与すべきかどうかというジレンマがありました。個々の判断はケースバイケースだとは思いますが、実臨床に影響を与えるランダム化比較試験結果かもしれません。
 とかく呼吸器科領域では、あまり輸液を多くすると時に患者さんが喀痰に溺れるような事態を招くことを経験します。そのため、ドライサイドに管理するよう心がけている医師も多いでしょう。

Eduardo Bruera, et al.
Parenteral Hydration in Patients With Advanced Cancer: A Multicenter, Double-Blind, Placebo-Controlled Randomized Trial
JCO January 1, 2013 vol. 31 no. 1 111-118


目的:
 ほとんどの終末期癌患者さんは病院で末梢輸液を受け、ホスピスでは輸液を受けてないが、いずれのプラクティスにもエビデンスは限られている。このランダム化比較試験では、脱水による症状、QOL、進行癌患者の生存に対する輸液の効果について検証する。

患者および方法:
 2007年2月5日から2011年4月16日までの間、Silverado Hospice, Odyssey Hospice, Vitas
Hospice, Houston Hospice, Christus VNA Hospiceにおいて本試験が実施された。
 終末期進行癌患者で、皮膚ツルゴールは鎖骨下領域において減弱しており(2秒超)、脱水アセスメントで脱水がみられ脱水関連症状を有するもの、余命1週間以上は予想される患者を登録した。
 上記6病院129人の癌患者を末梢輸液(生理食塩水1L/日)あるいはプラセボ(生理食塩水100ml/日)にランダムに割り付けた。プライマリアウトカムは、ベースラインと4日目の脱水関連症状の変化(疲労、ミオクローヌス、鎮静、幻覚:0点が最良で40点が最悪)とした。セカンダリアウトカムは、Edmonton Symptom Assessment Scale (ESAS), Memorial Delirium Assessment Scale (MDAS), Nursing Delirium Screening Scale (NuDESC), Unified Myoclonus Rating Scale (UMRS), Functional Assessment of Chronic Illness Therapy–Fatigue (FACIT-F), 脱水アセスメントスケール、血清クレアチニン、血清BUN、全生存率とした。

結果:
 輸液群(n = 63)とプラセボ群(n = 66)は、ベースラインの特徴が同等であった。
 2群間で脱水関連症状の変化に有意差を同定されなかった(−3.3 v −2.8, P = .77)。また、セカンダリアウトカムについても4日目までに有意差はみられず:ESAS (all nonsignificant), MDAS (1 v 3.5, P = .084), NuDESC (0 v 0, P = .13), UMRS (0 v 0, P = .54)。全生存率も両群とも有意差はみられなかった(中央値 21 v 15日, P = .83)。
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結論:
 プラセボと比較して1日1Lの輸液は脱水症状、QOL、生存を改善しなかった。


by otowelt | 2013-01-02 00:02 | 肺癌・その他腫瘍

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