成人ARDSに対するHFOVは通常の人工呼吸管理と比較して死亡率を上昇

 NEJMから、HFOVに関する比較試験が2つNEJMから発表されています。これは、そのうちの1つです。新生児の有用性(胎児水腫や重篤なRDSなど)で肺傷害を予防する意味合いはあると思いますので、この換気法が必ずしも良くないという意味ではないと思います。

Niall D. Ferguson, et al.
High-Frequency Oscillation in Early Acute Respiratory Distress Syndrome.
NEJM January 22, 2013DOI: 10.1056/NEJMoa1215554


背景:
 これまでの臨床試験で、高頻度振動換気:high-frequency oscillatory ventilation (HFOV)は、成人の急性呼吸促迫症候群:acute respiratory distress syndrome (ARDS)の死亡率を下げるという報告がなされたが、臨床試験は限定されておりサンプルサイズも小さい(Am J Respir Crit Care Med 2002;166:801-8.、Crit Care 2005;9:R430-R439.、BMJ 2010;340:c2327.)。

方法:
 パイロット試験としてカナダの11施設およびサウジアラビアの1施設で試験がおこなわれ、本試験は多施設共同ランダム化比較試験として合計5ヶ 国の39ICUでおこなわれた。成人新規発症の中等度から重症ARDS患者(FiO2が0.50以上でP/F比200以下)に対して、ランダムに肺リクルートメントを目標としたHFOVあるいは低換気量・高PEEPによる肺リクルートメントを目標とした呼吸器設定に割り付けた。
 登録後、標準化人工呼吸設定が全ての患者に適応された。すなわち、従圧式で一回換気量が6ml/kg、FiO2が0.60、PEEPが10cmH2Oとした。その30分後、P/F比が依然 200以下であれば、患者はHFOVあるいはコントロール群としての人工呼吸管理群のランダム化フェーズに進んだ。
 プライマリアウトカムは全死因の院内死亡とした。

結果:
 1200人の患者を登録する予定だったが、548人を登録し終えた時点でHFOV群の死亡率が有意に高いことが判明し、試験は早期に中止された。2群 ともベースラインはよくバランスがとれていた。HFOV群は中央値で3日間HFOVをおこない(IQR 2 to 8)、抵抗性の低酸素血症のためコントロール群の273人中34人(12%)がHFOVを受けた。
 院内死亡率はHFOV群で47%、コントロール群で35%であった(HFOVの死亡相対リスク 1.33; 95% 信頼区間 1.09 to 1.64; P = 0.005)。この知見はベースラインの異常とは独立していた。HFOV群の患者はミダゾラムがコントロール群と比較して多かった(1日199 mg [IQR100 to 382]vs. 1日141 mg [IQR68 to 240], P<0.001)。またHFOV群では、コントロール群よりも多くの患者が神経筋ブロッカーを使用していた(83% vs. 68%, P<0.001)。加えて、HFOV群では、血管作動薬の使用が多く(91% vs. 84%, P = 0.01)、コントロール群よりも使用期間が長かった(5日 vs. 3日、 P = 0.01)。
 抵抗性の低酸素血症はコントロール群の方がHFOV群よりも多かったが、その状態に陥ったあとの死亡率は両群とも同等だった。また、生命維持装 置の中止後の死亡率は両群とも同等だった(HFOV群:55% [71 of 129 ] vs. コントロール群:49% [47 of 96]、 P = 0.12)。barotrauma率も、統計学的には両群とも同等だった(18% vs. 13%, P = 0.13)。
 生存した患者の解析では、人工呼吸器装着期間やICU在室期間は同等だった。

結論:
 成人の中等度から重症のARDSでは、早期のHFOVは低換気量・高PEEPの人工呼吸管理と比較して死亡率を減らすことはなく、むしろ上昇す るかもしれない。

by otowelt | 2013-01-25 00:02 | 集中治療

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