潜在性結核(LTBI)の治療を承諾・拒否する予測因子とは

e0156318_223463.jpg 潜在性結核(LTBI)の治療はイソニアジドを内服してもらうだけなのですが、血液検査や結核発症の検査をしなければならず、わざわざ何度も病院に足を運ぶのがイヤだとおっしゃられる人も少なくありません。職務として副作用の説明をしなければなりませんが、「副作用があるなら飲みたくない」と患者さんが思うのも至極当然のことです。
 LTBIの治療拒否について考察した興味深い報告です。医療従事者がLTBI治療拒否の予測因子というのは驚きましたが、これはアメリカとカナダの医療従事者が他の国から来ている例が多いためだと考察されています。

P. W. Colson, et al.
Acceptance of treatment for latent tuberculosis infection: prospective cohort study in the United States and Canada
INT J TUBERC LUNG DIS 17(4):473–479, 2013.


背景:
 アメリカとカナダでは年間おおよそ30万人の人が潜在性結核(LTBI)の治療をされている。治療を拒否する人の頻度や特徴についてはほとんどわかっていない。

デザイン:
 2007年3月から2008年9月まで、CDCガイドラインに準じてLTBI治療を推奨された18歳以上の人で、根拠なしに専制的イソニアジド治療を提示された人やイソニアジド以外の治療をおこなった人などを除外し、LTBIの治療承諾と拒否に関連する因子を調べた。
 30のクリニックでおこなわれた試験で、潜在的な予測因子を解析するため多変量回帰モデルが用いられた。

結果:
 2007年3月から2008年9月までの間の1692人の登録者のうち、1515人(89.5%)がLTBI治療を承諾し、177人(10.5%)が拒否した。拒否した理由の半数近くが、内服に伴う問題であった。
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 登録者は女性が多く(53.4%)、最も多い年齢層は25–44歳であった(52.8%)。ヒスパニックとアジア人が29.7%を占め、非ヒスパニック系黒人が24.9%、非ヒスパニック系白人が10.3%であった。およそ4分の3の参加者がアメリカとカナダ以外の国の出身であった。68%が高校卒業以降の学歴を有していた。HIV感染者は32人おり、全員がLTBI治療を承諾した。
 LTBI治療を承諾する予測因子としては、一人の人間が結核を伝播させる可能性があることを信じていること、結核の知識を有していること、来院スケジュールの都合がついたこと、文化順応が低いことであった。文化順応は、移民LTBI例が多く、アメリカあるいはカナダに入国してから文化順応がどの程度進んでいるかによって結果に差が出ると考えられたため。
 LTBI治療を拒否する予測因子としては、医療従事者、以前にLTBI治療を進められたことがあること、内服することがよくないと信じていることが挙げられた。
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結論:
 この試験は、LTBIを承諾あるいは拒否する予測因子を調べた最初のプロスペクティブ試験である。医療従事者、既にLTBI治療を推奨されている人、治療による副作用を心配する人に対してLTBI治療を承諾させるには多大な努力が必要である。都合のつきやすい受診スケジュールを組み、結核知識を啓蒙することでLTBI治療の承諾も可能になるかもしれない。


by otowelt | 2013-03-13 00:03 | 抗酸菌感染症

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