凝固系異常や血小板数の低下がある患者への胸腔穿刺は安全!?

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 持続的に太いチューブを留置するような胸腔ドレナージはともかくとして、軽度の凝固系異常や血小板減少の際に胸腔試験穿刺でコントール不能の血胸になった例はまだ見たことがありません。こういった場合に胸腔穿刺を躊躇することがありますが、血胸のリスクをどの程度と見積もって注意すべきなのか長らく疑問に思っていました。
 さすがに太いチューブで開放創をつくる処置の場合には躊躇しますが、日本の多くの呼吸器科医がおこなっている20G針での胸腔試験穿刺はまず安全だと個人的に思っていました(過信かもしれませんが)。
 本試験では5Frのチューブでも安全だという意見のようです。胸腔穿刺とドレナージの境界線上にあるような太さだと思いますので、この結果は今後の参考になりそうです。

Rebecca M. Hibbert, et al.
Safety of ultrasound-guided thoracentesis in patients with abnormal preprocedural coagulation parameters
CHEST. 2013 doi: 10.1378/chest.12-2374


背景:
 胸腔穿刺後の出血性合併症が低いにもかかわらず、処置前の異常凝固パラメータに対する是正はよくおこなわれている。われわれは、凝固系異常を有する患者の超音波ガイド下胸腔穿刺後の出血性合併症について調べた。

方法:
 2005年1月から2011年9月までの間、INR1.6超あるいは/かつ血小板5万以下の患者における1009の超音波ガイド下胸腔穿刺を登録した。
 処置は2グループにわけておこなわれた。すなわち、グループ1:胸腔穿刺前に凝固系異常の補正をおこなわずに処置をおこなうグループ、グループ2:処置前に血小板輸血あるいは新鮮凍結血漿を投与して補正をはかるグループ、である。
 全処置についての出血性合併症が調べられた。
 胸腔穿刺は、25G針で1%キシロカインを用いた局所麻酔をおこない、5Frのアンギオカテーテルを胸腔内に挿入して処置がおこなわれた。最大胸水ドレナージ量は1100~1200ml程度とした。

結果:
 1059の胸腔穿刺のうち、診療録の使用に承諾できなかった50例を除き、合計1009の胸腔穿刺のが組み込まれた。538人の706穿刺がグループ1、235人の303穿刺がグループ2に割り付けられた。
 53%が男性であり、平均年齢は67±15歳だった。処置前の輸血を受けた患者は平均血小板数が低く、多くが5万以下であった。
 589の穿刺(58%)が右側で、残りは左側の胸腔だった。排液量は0~3500mlとさまざまで、平均量は896±514mlだった。
 1009の処置のうち4例のみ出血性合併症がみられた(0.40%, 95% CI: 0.15% to 1.02%)。グループ1が0人(0/706 or 0.0%; 95% CI: 0% to 0.68%)、グループ2が4人(4/303 or 1.32 %; 95% CI: 0.51% to 3.36%)であった。
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 両グループともに処置後にヘモグロビンの低下が1週間で観察されたが、処置にともなう出血性合併症との関連性はなかった(70% vs76%, p=0.87)。平均低下はグループ1で1.06 g/dL (±0.93 g/dL)、グループ2で1.23 g/dL (±0.99 g/dL)だった。

結論:
 超音波ガイド下の胸腔穿刺の出血性合併症はまれであり、INRや血小板数を処置前に補正しても効果はない。凝固系パラメータの異常があっても胸腔穿刺は安全と考える。


by otowelt | 2013-03-20 12:16 | 呼吸器その他

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