東日本大震災における呼吸器疾患の実態

 このブログでも、過去にいくつか東日本大震災関連の論文を紹介しました。

東日本大震災における胸部外傷
東日本大震災における市中肺炎の発生

 Respiratori Investigationからの論文です。とても重要な報告です。

Shinya Ohkouchi, et al.
Deterioration in regional health status after the acute phase of a great disaster: Respiratory physicians' experiences of the Great East Japan Earthquake
Respiratory Investigation, in press. 15 March 2013


背景:
 2011年3月11日に東日本大震災が起こった。引き続いて起こった荒廃は余震によるものではなく、津波によるものであった。
 2012年2月29日現在、15852人が死亡し、いまだ3279人が行方不明の状態である。死亡者のうち、90.6%が溺水、4.2%が破片などの外傷、0.9%が火災による死亡であった。そして、全体の55.7%が65歳以上の高齢者死亡だった。救急医療チームの尽力にもかかわらず十分な援助がいきわたらず、多くの人が彼らの到着前に死亡した。生存したものの避難が必要となった人は宮城県の報告では32万人にのぼったといわれている。
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 そのため、医療従事者の主たる目的は被災地の人の健康状態の悪化を防ぐことにあった。この論文を通して、自然災害の急性期に何が重要であるかを考察したい。

方法:
 地震後の急性期に正確な入院情報を得ることはできなかったため、宮城県内の14の病院からアンケートをに基づいて入院患者の調査をおこなった。これらの病院は宮城県内のベッド数の30%を有していた。呼吸器科に入院した患者に対する調査をおこない、疾患の頻度の変化を調べた。

結果:
 2011年3月11日から4月10日までの患者数は、2010年の同時期と比較して2.7倍に増えていた(1223人 vs 443人)。気管支喘息、COPD急性増悪、市中肺炎は全ての年齢層において2011年のほうが2010年よりも2~3倍増えた(それぞれ98人 vs 32人、117人 vs 46人、443人 vs 202人)。市中肺炎の半数は緊急避難場所から発生したものであった。溺水などの他の呼吸器疾患での入院は少なかった。
 疾患の年齢分布には2010年と2011年で差はみられず、呼吸器疾患での死亡率がこの震災によって有意に増えたわけではなかった。
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結論:
 これらの結果は、避難場所・居住地の劣悪な環境、または避難者過多、基礎資源不足に由来するものである。自然災害の後の急性期の健康被害を予防するために、適切な避難場所、供給システム、ワクチンを含む感染予防策が必要であろう。


by otowelt | 2013-03-25 00:19 | 救急

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