IgG4関連肺疾患の臨床的特徴

e0156318_12493716.jpgIgG4関連疾患の診断基準は、日本の2つの研究班が合同で作成した包括的な診断基準が有名です。
Umehara H, et al. Comprehensive diagnostic criteria for IgG4-related disease (IgG4-RD), 2011. Mod Rheumatol. 2012 Feb;22(1):21-30.

 レトロスペクティブではありますが、IgG4関連肺疾患をまとめて丁寧に報告した今月のRespirologyの論文をご紹介します。とても素晴らしい論文だと思います。
 このIgG4関連疾患という疾患範疇は、ある程度のスペクトラムを孕んでいます。特にSjögren症候群との対比を議論すれば、綿密な境界線がないためキリがありません。ただ、”いわゆるIgG4関連肺疾患”はどうやら血清IgG4の中央値が1600mg/dL以上あり、最低値でも300mg/dL台であることを考えますと、135mg/dLを超えるか超えないか際どい患者さんでこの鑑別疾患を議論することは少々ナンセンスなのかもしれません。感度を高めるならカットオフ値135mg/dLあたりでよいとしても、特異度を高めるならさらに高い数値に設定すべきかもしれません。

Matsui S, et al.
Immunoglobulin G4-related lung disease: Clinicoradiological and pathological features
Respirology (2013) 18, 480–487. doi: 10.1111/resp.12016


背景および目的:
 免疫グロブリンG4(IgG4)関連疾患は、肺を含め多臓器に障害をおよぼす疾患である。IgG4関連肺疾患はさまざまな病型を取り、臨床的、放射線学的、病理学的特徴が解析されてきた。

方法:
 血清IgG4濃度の上昇およびIgG4陽性形質細胞の胸腔内臓器への浸潤がみられ、IgG4関連肺疾患が疑われた48人の患者をレトロスペクティブに評価した。Japanese Ministry of Health, Labor and Welfare Research Groupsによる診断基準(Mod Rheumatol. 2012 Feb;22(1):21-30.)を用い、血清IgG4濃度基準は>135 mg/dLとした。検体は、外科的生検によって採取されたものを用い、IgG4陽性細胞の浸潤を有するものとした(ef: IgG4陽性細胞がIgG陽性形質細胞の40%を超える、生検標本の強拡大視野当たり10個を超える)。検体はHE染色、Elastica-van-Gieson染色、IgGおよびIgG4免疫組織化学染色(Zymed Laboratory, San Francisco, CA, USA)がおこなわれた。さらに、(i) マクロでの浸潤パターン観察 (ii)リンパ管浸潤の程度(mild, 1+; moderate,2+; severe, 3+)、(iii) 胸膜、肺胞隔壁、血管、気管支周囲のリンパ形質細胞浸潤の有無、(iv) リンパ過形成の有無、(v) 線維化の有無、(vi)器質化肺炎パターンの有無、を検証した。
 患者の臨床的特徴、胸部画像所見、病理学的所見が調べられた。最終的な診断は、カンファレンス合議のもと決定された。

結果:
 48人の患者のうち、18人が胸腔内の所見がありIgG4関連肺疾患を有していると考えられた。これらの患者の多くは中年から高齢の男性であった(平均年齢62.0歳、男性78%)。
 IgG4関連肺疾患は血清IgGおよびIgG4濃度が高値で(それぞれ中央値は3628mg/dL [range:2191–7534]、1635mg/dL [range:374–6490])、白血球数や血清CRPはおおむね正常であった。sIL-2Rは中央値1750U/mL(range:1162–3990)であった。抗核抗体は67%(12人)で陽性であった。気管支肺胞洗浄をおこなわれた15人の結果は、総細胞数中央値1.54×105(range: 0.1–6.3)、リンパ球比率中央値は32% (range: 2–50)、CD4/8中央値は1.7 (range: 0.9–4.6)であった。呼吸機能検査は65%が正常であった。
 共通する放射線学的所見は、縦隔リンパ節腫大(a)およびリンパ周囲間質(気管支血管束、小葉間胞隔壁)の肥厚(b)で、胸膜直下あるいは気管支血管束周囲のコンソリデーションを合併する場合もあった。
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 病理学的所見としては、リンパ路に沿った線維化を伴う著明なリンパ形質細胞浸潤で、この分布は放射線学的所見と合致するものであった。
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 18人中15人にステロイド治療がおこなわれ、中央値で1日40mg(range: 30-60mg)のプレドニゾンが使用された。この治療に対する反応性は良好であった。治療開始後数ヶ月で効果がみられ、維持療法は中央値で1日5.0mgの(range 2–10 mg/day)プレドニゾンが用いられた。治療期間中央値は36ヶ月であった(range 6–72 ヶ月)。ステロイドを用いなかった患者のうち1人は自然軽快した。

結論:
 胸腔内にみられるIgG4関連肺疾患は、肺内のリンパ路に沿って発症するもので、さまざまな臨床的特徴を有する。いくつかのリンパ増殖性疾患は同様の所見がみられるため、臨床放射線学的および病理学的特徴の相関性はIgG4関連肺疾患の診断において重要であろう。


by otowelt | 2013-04-03 08:37 | びまん性肺疾患

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