特発性肺線維症の陰影を定量化することで予後予測が可能に

特発性肺線維症の陰影を定量化することで予後予測が可能に_e0156318_22115711.jpg びまん性肺疾患で注目を集めているCALIPERを臨床応用した報告です。今年のATSでも画像解析によるIPFの予後予測の演題がいくつか予定されているようです。

Fabien Maldonado, et al.
Automated quantification of radiologic patterns predicts survival in idiopathic pulmonary fibrosis
ERJ April 5, 2013 erj00718-2012


背景:
 特発性肺線維症(IPF)の正確な予後をアセスメントすることは、個々の放射線学的多様性、身体的多様性のために捉えどころがないままである。われわれは、短期間の放射線学的画像の変化が生存予測を可能にすることができるのではないかという仮説を立てた。

方法:
 われわれはMayoクリニックのBiomedical Imaging Resource Labで開発されたソフトウェアツールであるCALIPER (Computer-Aided Lung Informatics for Pathology Evaluation and Rating)を用い、HRCTにおける肺実質の異常を解析・定量化した。
 われわれは、ベースラインとフォローアップ(それぞれタイムポイント1および2)にHRCTをIPF患者55人に撮影し、専門の放射線科医によってCALIPER定量項目を解析し臨床アウトカムとの相関性を調べた。IPFの診断は国際的なコンセンサスに基づいた診断基準を用いた。
 IPF患者はベースラインおよび2回目のHRCTを撮影する30日以内に呼吸機能検査を受けた。
 CALIPERが同定したのは以下の陰影である。すなわち、気腫、スリガラス影、網状影、蜂巣肺である。これらは12の領域に分けて解析された。
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結果:
 平均289日の間隔での、CALIPER定量下での網状影濃度の変化(HR 1.91, P = 0.006)、総間質性陰影の濃度の変化(HR 1.70, P = 0.003)、パーセント間質性陰影の変化(HR 1.52, P = 0.017)はフォロオーアップ期間2.4年後の生存を有意に予測した。
 放射線科医の診断による、特異的な放射線学的特徴のない短期での間質性肺疾患の進行もまた死亡の予後予測が可能であった。
 CALIPER定量による全肺気量と呼吸機能の全肺気量の相関はきわめて良好であった(ベースライン:r=0.77, P <0.001、2回目:r=0.87, P < 0.001)。

結論:
 IPF患者におけるHRCTでの短期間での肺野の変化を定量化することによって、IPFの予後予測が可能になるかもしれない。


by otowelt | 2013-04-19 16:06 | びまん性肺疾患

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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