肥満患者ではボリコナゾールの血中濃度が想定より上がる

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 最近、かなりBMIが高い侵襲性肺アスペルギルス症の患者さんに対してボリコナゾールを使用しました。しかしながら血中濃度がかなり高く出たため、改めて気をつけようと兜の緒を締め直しました。
 最近の臨床試験をいくつかピックアップしてみました。


Hoenigl M, et al.
Potential Factors for Inadequate Voriconazole Plasma Concentrations in ICU Patients and Patients with Haematological Malignancies.
Antimicrob Agents Chemother. 2013 Apr 29.


背景:
 ボリコナゾールの血中濃度(VPCs)は多様に変化し、治療域を出ると侵襲性アスペルギルス症(IA)のアウトカムを悪化させたり、毒性を増加させたりする。
 このスタディの目的は、実臨床において不適切なVPCs例をICU患者および血液悪性腫瘍患者で抽出し、そのリスク因子を検証することである。

方法:
 12ヶ月におよぶ試験の間、VPCsを高速液体クロマトグラフィーで解析した症例を抽出した。適切な血中濃度は1.5-5.5 mg/Lと定義した。VPCs <1.5mg/Lは血中濃度低値、VPCs >5.5 mg/Lは潜在的毒性域と想定した。

結果:
 ボリコナゾールを投与された61人のうち、合計221のVPCs測定例を抽出した。
 221のうち124(56%)が血中濃度低値であった。多変量解析ではVPCs低値は、ボリコナゾールの治療失敗、予防的使用例、若年例、基礎疾患としての血液悪性腫瘍の存在、プロトンポンプ阻害薬の併用、副作用がないことと有意に関連していた。またVPCs低値は、ボリコナゾールの臨床的失敗の独立予測因子でもあった。適切な血中濃度であったのは221のうち79(36%)だった。そして18検体(8%)において潜在的毒性域が測定された。多変量解析では、BMI高値、血液悪性腫瘍がないこと、治療適応例、下痢がVPCs高値のリスク因子であった。神経学的副作用は6人の患者にみられ、ほとんどが上位4分の1の濃度例にみられた。

結論:
 ボリコナゾールの治療にあたっては若年例、予防的使用、基礎疾患としての血液悪性腫瘍の存在、BMI、プロトンポンプ阻害薬の併用の因子を考慮する必要があるだろう。


Davies-Vorbrodt S, et al.
Voriconazole serum concentrations in obese and overweight immunocompromised patients: a retrospective review.
Pharmacotherapy. 2013 Jan;33(1):22-30. doi: 10.1002/phar.1156.


目的:
 肥満患者および過体重の免疫抑制患者において、ボリコナゾールの用量と血中濃度の関連を評価すること。

方法:
 包括的がんセンターにおけるレトロスペクティブ試験である。対象は92人の血液悪性腫瘍または造血幹細胞移植を受けたボリコナゾール投与患者である。124の血中濃度が解析対象となった。
 患者背景、ボリコナゾール血中濃度、その他の臨床的因子、安全性データが抽出された。患者はBMIによって層別化された。

結果:
 高いBMI患者はボリコナゾール血中濃度(ランダム値)が有意に高かった(BMI25以上:6.4 mg/L BMI25未満:2.8 mg/L, p=0.04)。この傾向は経口ボリコナゾールよりも静脈注射製剤のほうが顕著であった。経口ボリコナゾールの場合、BMI25以上とBMI25未満では血中濃度はそれぞれ2.8 mg/L、2.0 mg/Lだった(p=0.18)。BMI25以上の患者は一日ボリコナゾールの用量も多かった(640 vs 400 mg, p<0.001)。
 ボリコナゾール血中濃度高値はALTが正常上限の3倍以上の上昇になった患者の比率と関連していた。ボリコナゾールの血中濃度(ランダム値)2 mg/L以上は、高い治療反応性と関連していた(50% vs 33% [2mg/L未満])。

結論:
 肥満患者や過体重の患者では、実際の体重に基づいてボリコナゾールの用量を用いると、血中濃度が高くなる。そのため、こういった集団では適切な血中濃度を維持するために体重を補正する必要があるかもしれない。


Koselke E, et al.
Evaluation of the effect of obesity on voriconazole serum concentrations.
J Antimicrob Chemother. 2012 Dec;67(12):2957-62


方法:
 ボリコナゾールの血中濃度と毒性を肥満患者(BMI35超)と正常体重患者(BMI18.5-24.9)で比較した。用量はボリコナゾール4 mg/kg、12時間ごとの投与とした。

結果:
 肥満群(21人)では有意にボリコナゾールの平均血中濃度が正常体重群(66人)より高かった(6.2 vs 3.5 mg/L, P < 0.0001)。肥満群では有意にボリコナゾールの治療域以上の濃度(>5.5mg/L)の比率が高かった(67% vs 17%, P < 0.0001)。しかしながら、肝毒性および神経毒性の頻度は2群で差はみられなかった。
 肥満患者の解析において、理想体重に基づいた計算、補正体重に基づいた計算、実際の体重に基づいた計算では血中濃度に有意な差がみられた(それぞれ3.95、3.3、6.2 mg/L、P = 0.0009)。実際の体重に基づいた計算の場合、治療域にあったのはたった29%の患者であった。

結論:
 実際の体重に基づいた計算の場合、ボリコナゾール4mg/kg、12時間ごとの投与量では血中濃度が高くなってしまう。特に肥満患者の場合、理想体重や補正体重を用いる必要があるだろう。



by otowelt | 2013-05-04 00:00 | 感染症全般

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