ATS2013:世界貿易センタービル倒壊後の粉塵曝露によるサルコイドの呼吸機能とバイオマーカー

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ATS2013:世界貿易センタービル倒壊後の粉塵曝露によるサルコイドの呼吸機能とバイオマーカー_e0156318_11232815.jpgS.J. Cho, et al.
Predictive Biomarkers Of World Trade Center-Related Sarcoid
ATS 2013, May 19, 2013, Poster Discussion Session


背景:
 世界貿易センター(WTC)倒壊後の粉塵曝露はニューヨーク消防局(FDNY)の消防隊員や救急隊員、マンハッタン住人において呼吸器疾患を増加させた。FDNYは、9月11日以降に呼吸器系にサルコイド様肉芽腫を発生した症例の増加を報告している(WTC-サルコイド)。このWTC-サルコイドについてはよくわかっていない。

方法: 
 われわれの症例対象研究では、801人のWTC粉塵曝露を受けたFDNY消防隊員で9月11日以前は呼吸機能が正常であったものを登録した。9月11日以降に呼吸器的アセスメントがおこなわれた。そのうち、37人にWTC-サルコイドが同定され、呼吸機能検査と胸部CTが施行された。コントロール群として171人の健常者で9月11日より以前と以後に同様に検査が行われたものをマッチさせた。登録者は血液検査でバイオマーカーが測定された。

結果:
 WTC-サルコイド症例は、DLCOがコントロール群よりも低下していたが、これは正常範囲であった。他の呼吸機能検査については両群とも同等であった。
 血清バイオマーカーは、7人のWTC-サルコイド症例でMIF、Eotaxinが上昇しており、インターフェロンγ、IL-3、IL-4、MIP-1β、TNF-β、sVEGFRsが低下していた。

結論:
 WTC-サルコイドの患者は有意にDLCOがコントロール群よりも低かったが、臨床的には大きな差とは考えられない。WTC-サルコイドの患者でバイオマーカーがコントロール群と異なるパターンであり、これはWTC-サルコイドの免疫病理学的機序のあらわれではないかと考えられる。


by otowelt | 2013-05-19 23:06 | 呼吸器その他

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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