飛行機内での急変の原因の大半は失神、呼吸器症状、消化器症状

 残念ながら、日本ではアメリカのような「善きサマリア人の法」は適応されません。飛行機内で「お医者様はいらっしゃいますか」という場面で手を挙げて、たとえ機内のあらゆる医療器具を用いても救命できなかった場合、患者家族から訴えられるリスクがある国が日本です。訴訟をおそれて、手を挙げる医師は日本では多くないと言われています(刑法37条第1項、民法698条で責任は免除されるはずだという意見もあります)。

 ―――皆さんは日本国内の飛行機内で急変があった場合、手を挙げますか?

 最近のNEJMはアニメやら動画やら、かなり力を入れているようですね。しかしながら、この動画化の流れが顕著になっていくと、いつの日か、引用が難しくなってくる時代がくるんじゃないかと危惧しています。
e0156318_21191232.jpg
D.C. Peterson, et al.
Outcomes of Medical Emergencies on Commercial Airline Flights
N Engl J Med 2013;368:2075-83.


背景:
 全世界で、毎年27億5000万人が民間航空機を利用するとされており、その飛行中に医学的な緊急事態が生じた場合、医療アクセスは限定されてしまう。われわれは飛行中の医学的緊急事態およびそのアウトカムを報告した。

方法:
 2008年1月1日~2010年10月31日のあいだ、5つのアメリカ国内ないし国際航空会社から、医師が指揮する医療通信センターに通報があった医学的緊急事態の記録をサーベイした。その中で、頻度の高い疾患、機内で提供された医学的支援の種別を同定した。予定外の着陸空港変更、病院搬送、入院発生率、およびこれらに関連する因子を調べ、死亡率を算出。

結果:
 医療通信センターへの通報のあった飛行中の医学的緊急事態は合計11920件あった(飛行604回あたり 1件)。
 このうち、頻度の高かった疾患は、失神または失神前状態(37.4%)、呼吸器症状(12.1%)、悪心または嘔吐(9.5%)だった。心肺停止が最も死亡数が多く、それ以外では失神または失神前状態の死亡が4人と多かった。その他の飛行中の医学的緊急事態の48.1%で、乗り合わせた医師が医療支援を行い、そのうち7.3%では着陸空港が変更された。緊急着陸をおこなう確率は、医師が救援した場合は9.4%(95%信頼区間 8.7〜10.2)、救急医療サービス(EMS)提供者による救援で9.3%(95%信頼区間6.8〜11.7)と高かったものの、乗務員のみで対処した場合は3.8%(95%信頼区間3.1〜4.5)と低い結果であった。多変量解析では、緊急着陸との強い相関があったファクターは自動体外式除細動器(AED)の使用であった(オッズ比3.02、95%信頼区間1.89〜4.83)であった。
e0156318_2126318.jpg

 救援した患者のうち、処方頻度が最も高かったのは酸素で49.9%だった。次いで0.9%生食水の点滴が5.2%、アスピリンが5.0%だった。
 飛行後のフォローアップデータを入手することができた10914人のうち、25.8%が病院に搬送され、8.6%が入院、0.3%が死亡した。入院の原因として、脳卒中の可能性(オッズ比3.36、95%信頼区間1.88~6.03)、呼吸器症状(オッズ比 2.13、95%信頼区間1.48~3.06)、心臓症状(オッズ比 1.95、95%信頼区間1.37~2.77)の頻度が高かった。

結論:
 飛行機内での医学的緊急事態の大半は失神、呼吸器症状、消化管症状によるものであり、医師が任意で医療を提供する頻度が高かった。着陸空港の変更または死亡を起こした医学的緊急事態は少数例であり、飛行中に医学的緊急事態が発生した乗客の4分の1は病院で追加の医学的評価を受けた。



by otowelt | 2013-06-01 00:07 | 救急

<< SHINE試験:QVA149は... 5月31日:世界禁煙デー >>