結核の微生物学的治療失敗、再発、耐性獲得のアウトカムではDOTSも自己内服もたいして変わらない

e0156318_9262694.jpg 結核患者さんのほとんどがDOTS(directly observed therapy, short course)によって抗結核薬を内服していますが、先進国で入院治療している結核患者の場合、特にこの論文で述べられているようなアウトカムにおいてDOTSはあまり寄与していないのではないかと感じています。外来についても結局のところ日本の場合は患者個人の”性格”に依存するところが大きいのではないでしょうか。
 Discussionで述べられていますが、著者は決してDOTSを否定しているわけではなく、「このメタアナリシスが本当であれば、結核菌の耐性獲得がコンプライアンス不良だけでは片付けられない」という新たな疑問点を提唱しているようです。

Jotam G. Pasipanodya, et al.
A Meta-Analysis of Self-Administered vs Directly Observed Therapy Effect on Microbiologic Failure, Relapse, and Acquired Drug Resistance in Tuberculosis Patients
Clin Infect Dis. (2013) 57 (1): 21-31.


背景:
 臨床前試験やモンテカルロシミュレーションによれば、アドヒアランスの役割は薬剤耐性の獲得に限定的なものであり、かなり高レベルでのアドヒアランス不良がなければ治療失敗にはつながらないとされている。われわれは、耐性獲得の減少や微生物学的治療失敗、結核の再発のアウトカムにおいて、自己管理による内服(SAT)および直接監視下(DOT)での内服をメタアナリシスで評価した。

方法:
 1965年から2012年までおこなわれた、微生物学的に確定診断がついている成人結核患者を扱ったプロスペクティブ試験で、SATとDOTを比較した試験を抽出した。英語文献に限定せず、すべての言語を採用した。
 エンドポイントは微生物学的治療失敗、結核再発、耐性獲得とした。

結果:
 129試験のうち10試験(5試験がランダム化試験、5試験が観察研究)が選択基準を満たした。8774人の患者がDOT、3708人がSATに割り付けられた。10試験のうち9試験において統計学的に有意な異質性が観察された(I2 = 68%、P = .02)。
 DOTとSATを比較すると、微生物学的治療失敗におけるリスク差は0.0 (95%信頼区間−0.01 to 0.01)、再発におけるリスク差は0.01 (95%信頼区間 −0.03 to 0.06)、耐性獲得におけるリスク差は0.0 (95%信頼区間−0.01 to 0.01)だった。
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(文献より引用)

 発生率を比較すると、DOTおよびSATで微生物学的治療失敗は1.5% (95%信頼区間, 1.3%–1.8%) vs 1.7% (95%信頼区間, 1.2%–2.2%)、再発は3.7% (95%信頼区間 0.7%–17.6%) vs 2.3% (95%信頼区間, 0.7%–7.2%)、耐性獲得は1.5% (95%信頼区間,0.2%–9.90%) vs 0.9% (95%信頼区間, 0.4%–2.3%)だった。
 出版バイアスは確認されなかった。
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結論:
 結核治療において微生物学的治療失敗、再発、耐性獲得の観点からSATよりもDOTが勝るという根拠はない。微生物学的アウトカム不良のほかの原因を同定するべきであろう。


by otowelt | 2013-06-05 00:04 | 抗酸菌感染症

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