肥満パラドクス:市中肺炎において肥満は死亡率を減少させる

e0156318_8482052.jpg 2012年のERSで発表された演題が論文化されたようです。解析方法がERSの時とは異なるようです。

・ERS2012:肥満は肺炎の死亡率を低下させる一因かもしれない

Anika Singanayagam, et al.
Obesity is associated with improved survival in community-acquired pneumonia
Eur Respir J 2013 42:180-187


背景:
 H1N1インフルエンザにおいて肥満はアウトカム不良と関連しているが、市中肺炎における影響についてはまだよくわかっていない。

方法:
 プロスペクティブに市中肺炎の診断で来院した連続患者を2005年1月から2009年12月までの間登録した。BMIが入院時に測定され、BMIによって分類された。
 30日死亡率、人工呼吸器あるいは血管作動薬サポートが必要となるかどうかをプライマリエンドポイントに設定した。なお、悪性疾患、院内肺炎、免疫不全に伴う肺炎の症例は除外した。

結果:
 1079人の患者が登録され、19%が肥満であった。平均年齢は66歳であった(IQR 50–78歳)。正常体重の場合と比較して、肥満患者には糖尿病の罹患が多かった(14.2% vs 7.8%; p=0.008)。肺炎の起因菌はStreptococcus pneumoniaeが56.9%と最も多く、Haemophilus influenzae が10.1%とそれに次いだ。
 人工呼吸器や血管作動薬を必要としない市中肺炎において、BMI30以上とそれ未満の患者とで比較すると、30日死亡率は肥満患者の方が有意に低かった(2.4% vs 7.7%; p=0.007)。ただし、人工呼吸器や血管作動薬を必要とする重症肺炎では死亡率に差はみられなかった(p=0.7)。
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 Cox比例ハザード解析では肥満は30日死亡率を減少させる独立因子であった(ハザード比0.53, 95%信頼区間0.29–0.98)。
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ディスカッション:
 肥満は常に慢性炎症の状態にあるため、宿主の防御機能を常に高めている可能性が考えられる(Obes Rev 2011; 12: 653–659.)。具体的にはアディポカインなどがそれに相当する。有名なアディポカインであるレプチンは、マウスの研究において呼吸器の炎症を抑制するはたらきが知られている(Shock 2006; 25: 414–419.)。

結論:
 肥満は市中肺炎の死亡の保護的役割があるものと思われる。このメカニズムはよくわかっていないが、"obesity paradox"としての課題を残す。


by otowelt | 2013-07-06 00:10 | 感染症全般

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