AVAPERL試験:ベバシズマブ+ペメトレキセドによる維持療法はベバシズマブ単独維持療法よりPFS延長

 2013年のASCOの報告を加味して記載します。一部論文と異なる記載がありますがご容赦ください。
 ECOG4599試験、POINTBREAK試験、PARAMOUNT試験とこれまでのベバシズマブやペメトレキセドにからむ臨床試験の系譜を俯瞰的に生存期間という観点で見返してみると、ベバシズマブあるいはペメトレキセドのいずれの維持療法がベターかと問われると、どうしても後者に軍配があがってしまうように思います。どちらにしても、併用維持療法が最強レジメンであるという今年のASCOの盛り上がりは否定しません。

Barlesi F, et al.
Randomized Phase III Trial of Maintenance Bevacizumab With or Without Pemetrexed After First-Line Induction With Bevacizumab, Cisplatin, and Pemetrexed in Advanced Nonsquamous Non-Small-Cell Lung Cancer: AVAPERL (MO22089).
J Clin Oncol. 2013 Jul 8.


目的:
 維持化学療法は非小細胞肺癌(NSCLC)の患者の生存を改善させるとされているが、この領域での比較試験は多くない。AVAPERL試験は、ベバシズマブ単剤あるいはベバシズマブ+ペメトレキセドの維持療法の効果と安全性を比較した試験である。

患者および方法:
 進行非扁平上皮NSCLC患者がファーストライン化学療法としてベバシズマブ7.5 mg/kg、シスプラチン75 mg/m2、ペメトレキセド500 mg/m2を3週間ごとに4サイクル投与された。その後、奏効あるいは不変であった患者がランダムに1:1でベバシズマブ7.5 mg/kgの維持療法あるいはベバシズマブ7.5 mg/kg+ペメトレキセド500 mg/m2の維持療法に割り付けられた(増悪あるいは毒性が容認できなくなるまで3週ごとに投与)。プライマリエンドポィントはランダム化からの無増悪生存期間(PFS)とした。

結果:
 合計376人の患者が導入化学療法を受け、71.9%が病勢コントロールが得られ、67.3%がランダムに維持療法に登録された。125人がベバシズマブ単独、128人がベバシズマブ+ペメトレキセド治療に割り付けられた。フォローアップ中央期間は14.8ヶ月だった(JCO論文では8.1ヶ月)。
 ランダム化からのPFSは有意にベバシズマブ+ペメトレキセド併用群で改善した(中央値 3.7ヶ月 v 7.4ヶ月、ハザード比0.48、 95%信頼区間 0.35 - 0.66、 P < .001)。PFSによる利益は、年齢、パフォーマンスステータス、喫煙歴、導入化学療法の反応性によらず観察された。導入化学療法開始時からのPFSは、ベバシズマブ単独群6.6ヶ月に対して、併用療法群で10.2ヶ月だった(ハザード比0.58、95%信頼区間0.45-0.76、p<0.0001)となり、有意に併用療法群で良好だった。
 ランダム化からの全生存期間(OS)中央値は、ベバシズマブ単独群が13.2ヶ月であったのに対し、併用療法群は17.1ヶ月だった(ハザード比0.87、95%信頼区間0.63-1.21、p=0.29)。導入療法開始時からのOS中央値は、ベバシズマブ単独群15.9ヶ月に対し、併用療法群は19.8ヶ月であった(ハザード比0.88、95%信頼区間0.64-1.22、p=0.32)。いずれもペメトレキセド併用群はベバシズマブ単独群に比べて4ヶ月近くOSを延長したが、統計学的には有意ではなかった。
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(文献より引用)

 全てのグレード、グレード3以上、重篤な有害事象は、すべて併用維持療法群で有意に多くみられた。

結論:
 白金製剤ベースの化学療法とベバシズマブによって病勢コントロールが得られた非扁平上皮NSCLCの非選択的患者群において、ベバシズマブ+ペメトレキセド維持療法は、ベバシズマブ単独と比較してPFSの有意な延長をもたらした


by otowelt | 2013-07-14 00:38 | 肺癌・その他腫瘍

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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