PaCO2値はCOPD急性増悪の予測因子である

PaCO2値はCOPD急性増悪の予測因子である_e0156318_23175684.jpg 中部地方で盛んに呼吸器診療をおこなっている公立陶生病院からの報告です。少し古い情報を使っているようですが、電子カルテもまだなかった時代でしょうから、140人のデータを収集するのは大変だっただろうと思います。

Taga S, et al.
Predictors of the Need to Initiate Noninvasive Ventilation in Stable Outpatients with Acute Exacerbation of Chronic Obstructive Pulmonary Disease
Intern Med 52: 1781-1786, 2013


目的:
 安定期COPDの外来患者に対する、COPD急性増悪による非侵襲性換気(NIV)の必要性の予測因子はじゅうぶんに定義されていない。この試験の目的は、安定期COPD患者の急性増悪に対するNIVの必要性を予測する因子を調べることである。

方法:
 レトロスペクティブ試験である。1996年7月から2001年10月までの間に、安定期COPDの外来患者で、初回の急性増悪をきたして入院となった140人が登録された。患者背景や臨床パラメータが安定期に評価され、血液ガス分析、呼吸機能検査、BMI、修正MRC息切れスケールも調べられた。
 NIVが必要であるという症例は、1)中等度から重症の呼吸困難による呼吸不全があること(呼吸補助筋の使用がある等)、2)急性呼吸不全でpH7.35未満、PaCO245mmHg超、3)呼吸数24回/分 以上といった基準を満たすものとした。

結果:
 140人の患者のうち、NIVを要したのは32人(23%)であった。PaCO2の平均±標準偏差は、非NIV群で39.8± 6.4 mmHg、NIV群48.4± 9.6 mmHgだった(全症例の安定期は41.8 ± 8.1 mmHg)。一秒量(%予測値)は、同様に50.1±19.4%、40.8±19.7%だった。
 単変量Cox比例ハザード解析において、ベースラインのPaCO2(ハザード比1.14、95%信頼区間1.08-1.21)、1秒量(%予測値)(ハザード比1.03、95%信頼区間1.01-1.05)は有意な予測因子であった。多変量ロジスティック回帰分析では、PaCO2のみが有意な予測因子として残った(ハザード比1.18、95%信頼区間1.12-1.26)。

結論:
 安定期COPD患者において、入院を要する初回のCOPD急性増悪に対して、PaCO2値は独立予測因子である。


by otowelt | 2013-08-29 00:20 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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