社会経済的ステータスの低さ、男性、高齢者は結核の治療前死亡リスク上昇に関連

社会経済的ステータスの低さ、男性、高齢者は結核の治療前死亡リスク上昇に関連_e0156318_149833.jpg 肺結核と診断したならば、治療を迅速に開始すべきと結論づけた台湾の研究です。日本の結核臨床では、寝たきり・高齢者・認知症・低栄養・誤嚥などをきたした患者さんの死亡リスクが高いと思います。

Yen, Y-F, et al.
Prognostic factors associated with mortality before and during anti-tuberculosis treatment.
The International Journal of Tuberculosis and Lung Disease, Volume 17, Number 10, 1 October 2013 , pp. 1310-1316(7)


目的:
 台湾における培養陽性肺結核の成人患者における、抗結核治療開始前、治療早期/後期の死亡に関連する因子を同定する。

方法:
 2005年から2010年における台湾台北市における成人の肺結核患者をレトロスペクティブに同定した。

結果:
 4438人の患者(平均年齢64.6歳、70.6%が男性)のうち、76.8%が治療に成功し、5.4%が治療開始前に死亡し、9.0%が治療開始8週間以内(治療早期)に死亡、8.8%が治療開始8週間以降(治療後期)に死亡した。
 潜在的交絡因子で補正した場合、65歳以上の高齢者と男性は有意に死亡リスクを上昇させた。高齢者:治療前:オッズ比9.06・95%信頼区間5.96–13.79、治療早期:オッズ比6.29・95%信頼区間4.72–8.38、治療後期:オッズ比7.11・95%信頼区間5.26–9.62、男性:治療前:オッズ比1.53・95%信頼区間1.12–2.08、治療早期:オッズ比1.62・95%信頼区間1.27–2.07、治療後期:オッズ比2.12・95%信頼区間1.62–2.77。また、施設入所中の患者もリスクが高かった(オッズ比は治療前・治療早期・治療後期でそれぞれ2.02[95%信頼区間1.16–3.52]、3.32[95%信頼区間2.28–4.85]、3.69[95%信頼区間2.55–5.34])。
 また、高校卒業レベル以上の教育を受けている人は治療開始前の死亡リスクを著明に減少させた(高校卒業レベル以上:治療前:オッズ比0.27・95%信頼区間0.17–0.43、大学卒業レベル以上:治療前:オッズ比0.13・95%信頼区間0.07–0.23)。
 失業者は治療中の死亡リスクを上昇させた(治療前・治療早期・治療後期のオッズ比はそれぞれ4.61[95%信頼区間2.98–7.13]、5.32[95%信頼区間3.72–7.62]、4.10[95%信頼区間2.95–5.69])。
 胸部レントゲン上空洞がみられる場合や、喀痰抗酸菌塗抹の陽性は、治療開始前の死亡リスクを下げた(それぞれオッズ比0.19[95%信頼区間0.11–0.34]、0.26[95%信頼区間0.19–0.36])。

結論:
 成人の培養陽性肺結核患者の死亡率を下げるために、医師に結核に対する警鐘を鳴らすだけでなく、特に社会経済的ステータスの低い男性や高齢者に対して早期治療の導入をすみやかにおこなうべきである。


by otowelt | 2013-09-23 00:10 | 抗酸菌感染症

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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