N95マスクは息苦しいのか

 私は普段から結核病棟の患者さんを診療していますので、毎日N95マスクを装着します。外来でも結核疑いの患者さんは多いので、常にN95マスクを装着している状態です。男性の研修医はそうでもないんですが、女性の研修医のほとんどが「N95マスクを着けて結核病棟の階段をのぼっているだけで息がしんどいです」と言います。

 当院のN95マスクは以下のようなアヒル型のものです。他にも、おわん型のマスクもあります。アヒル型のN95マスクは、鼻頭から目の下にかけてワイヤーの痕が残ってしまうのが難点です。
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 何人かの研修医にN95マスクをつけもらって、SpO2、心拍数、呼吸数を測定してみたことがあります。N95マスクを装着せずに肺癌病棟に階段で昇った場合と、N95マスクを装着して結核病棟に階段で昇った場合を比較してみました。すると、興味深いことにN95マスクを装着してもさほどSpO2は下がらないのですが、心拍数と呼吸数が上昇するではありませんか()。肺胞低換気に陥ろうとするのを心拍数と呼吸数で代償するを目の当たりにしているのかどうか定かではありませんが、少なくとも主観的に息がしんどいと感じていることは明白でした。しかし、研修医が結核病棟の勤務に慣れていくにつれて、N95耐性ができたのでしょうか、心拍数と呼吸数はほぼ変動しなくなりました。ちなみにこれはちゃんとした研究でも何でもなくて、私と研修医がその昔興味本位でおこなったものなのであしからず。
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 ちゃんとした研究ではどういった結果が出ているかといいますと、探してみると見つかりました。10人の男女にN95マスクを含めた種々のマスクを装着してもらって、トレッドミルに臨んだ2005年の研究があります。その研究によれば、N95マスクの方がサージカルマスクよりも心拍数、マスク内温度、マスク内湿度、主観的な息のつらさの度合いが高かったとされています(Int Arch Occup Environ Health. 2005 Jul;78(6):501-9.)。健康な人であればSpO2が低下するような事態にはならないのでしょうが、腎不全がある場合はN95マスクの装着によって動脈血酸素分圧が低下するという報告もあります(J Formos Med Assoc. 2004 Aug;103(8):624-8.)。


by otowelt | 2013-12-07 00:17 | 抗酸菌感染症

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