モンテルカストは感染後咳嗽に対して有効ではない

モンテルカストは感染後咳嗽に対して有効ではない_e0156318_10114661.jpg 鎮咳薬に関する臨床試験というのはあまり多くありません。
 ちなみにこれを書いている現在、私も感染後咳嗽に悩まされています。自分の著書に書いておいてナンですが、リンコデ(コデインリン酸®)もメジコン®も効かないのでイライラしています。手元にハチミツがないので、こうなったら机の引き出しに入っているモンテルカスト(シングレア®)を飲んでやろうか、なんて思ってました。

Kay Wang, et al.
Montelukast for postinfectious cough in adults: a double-blind randomised placebo-controlled trial
The Lancet Respiratory Medicine, Early Online Publication, 2 December 2013, doi:10.1016/S2213-2600(13)70245-5


背景:
 感染後咳嗽はプライマリケアではよくみられる病態であるが、効果的な治療は証明されていない。システイニルロイコトリエンは感染後咳嗽や百日咳の病態に関与しているとされている。われわれは、感染後咳嗽に対してシステイニルロイコトリエン受容体拮抗薬であるモンテルカストの効果を検証した。

方法:
 このイギリスのランダム化プラセボ対照比較試験において、2~8週間の感染後咳嗽を呈した非喫煙者の16~49歳の成人患者を登録した。患者は百日咳の検査を受け、ランダムにモンテルカスト10mg1日1回あるいはプラセボに2週間割り付けられた。患者はその後試験を継続して追加で2週間内服することが選択できた。ランダム化ハコンピュータ上でおこなわれ、患者、主治医、研究者は治療割り付けを盲検化された。
 効果は、咳嗽特異的QOLを調べるためLeicester咳嗽質問票によって評価された。プライマリアウトカムはベースラインと2つのフォローアップポイント(2週間および4週間)におけるスコアの変化とした。

結果:
 2011年4月13日から2012年9月21日までの間、われわれは276人の患者のうち137人をモンテルカスト、139人をプラセボに割り付けた。70人(25%)の患者が検査室で百日咳であると確定された。
 咳嗽特異的QOLの改善は2週間後両群でともに観察されたが(モンテルカスト:平均2.7, 95%信頼区間2.2—3.3; プラセボ:3.6, 2.9—4.3)、臨床的に意義のある最小変化量:minimum clinically important differenceは満たさなかった(平均差-0.9、95%信頼区間-1.7~-0.04, p = 0.04)。これについて、いかなる感度解析でも統計学的な差はなかった。
 2週間後、データが得られた259人の参加者のうち192人が試験薬を継続した。4週間後において咳嗽特異的QOLは改善しなかった(モンテルカスト: 5.2, 95%信頼区間4.5—5.9; プラセボ:5.9, 5.1—6.7;平均差−0·5,95%信頼区間−1.5 ~0.6, p=0.38)。副作用についても差はなかった(p=0.14)。よくみられた副作用は喀痰、消化器症状、頭痛など。

結論:
 感染後咳嗽に対してモンテルカストは有効ではない。


by otowelt | 2013-12-15 00:48 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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