PANTHEON試験:中等症~重症のCOPD患者に対するN-アセチルシステイン長期投与は急性増悪を抑制する

PANTHEON試験:中等症~重症のCOPD患者に対するN-アセチルシステイン長期投与は急性増悪を抑制する_e0156318_1019146.jpg COPDに対するN-アセチルシステインについては最近報告が相次いでいます。日本では錠剤が売られていませんので、実臨床ではムコフィリン®の吸入が用いられています。

HIACE試験:高用量N-アセチルシステインはCOPD患者の末梢気道機能を改善、急性増悪の頻度も減少
メタアナリシス:COPDに対する高用量NACは急性増悪を抑制

 いずれ日本でも錠剤が使えるようになるでしょうね。今でもAmazonなどで手に入れることは簡単ですが・・・。

Jin-Ping Zheng, et al.
Twice daily N-acetylcysteine 600 mg for exacerbations of chronic obstructive pulmonary disease (PANTHEON): a randomised, double-blind placebo-controlled trial
The Lancet Respiratory Medicine, Early Online Publication, 30 January 2014


背景:
 酸化ストレスと炎症の増加は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の主要な病態生理である。抗酸化作用あるいは抗炎症作用のある薬剤、たとえばN-アセチルシステインはCOPDの有用な治療アプローチになるかもしれない。われわれは、N-アセチルシステインがCOPD患者における急性増悪の頻度を減らすことができるかどうか検証した。

方法:
 このプロスペクティブランダム化プラセボ対照並行群間試験において、われわれは中国の34病院で40~80歳の中等症~重症COPD患者を登録した。吸入ステロイド薬の使用(定期使用かそうでないか)によって層別化し、患者をN-アセチルシステイン(600mg錠1日2回内服)あるいはプラセボに1年間割り付けた。プライマリエンドポイントは、一度でも試験該当薬を内服しランダム化から最低一回のアセスメントを受けた患者における年間のCOPD急性増悪の頻度とした。

結果:
 2009年6月25日から2010年12月29日までの間、われわれは1297人の患者をスクリーニングし、1006人がランダム化の適格基準を満たした。その結果、504人がN-アセチルシステイン、502人がプラセボに割り付けられた。
 1年後、われわれはN-アセチルシステイン群に割り付けられた482人の患者において497の急性増悪エピソードを同定した(1.16回/年)。そして、プラセボ群に割り付けられた482人の患者のいて641の急性増悪エピソードを同定した(1.49回/年;リスク比0.78, 95%信頼区間0.67—0.90; p=0.0011)。N-アセチルシステインは忍容性が高かった(有害事象29% vs. 26%)。最もよくみられた重篤な有害事象はCOPD急性増悪であった(6% vs. 7%)。

結論:
 中等症~重症COPDの中国人患者において、長期のN-アセチルシステイン600mg1日2回の投与はCOPD急性増悪を予防することができる。将来的にGOLD1のような軽症COPD患者での効果の探索も必要だろう。


by otowelt | 2014-02-03 00:20 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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