終末期に抗癌剤を投与するメリットはあるのか?

e0156318_14392693.jpg とかく固形癌に関しては、医療従事者が感じている治療効果と患者さんが期待する治療効果にかなりのギャップがあるように感じています。当初、患者さんが期待しているのは癌の「治癒」であり、医療従事者がとなりで現実的な話を交えながら診ていく必要があります。いつまでも「抗癌剤」という言葉によって患者さんに漫然たる希望を与え続けることに対しては、私は疑問を感じます。

Wright AA, et al.
Associations between palliative chemotherapy and adult cancer patients' end of life care and place of death: prospective cohort study.
BMJ. 2014 Mar 4;348:g1219. doi: 10.1136/bmj.g1219.


目的:
 癌患者の終末期に化学療法を行うことで患者が後期に受ける医療や死を迎える場所に影響を与えるかどうか調べる。

デザイン:
 アメリカの8施設で進行癌患者を対象に実施された前向き縦断研究の二次解析。

方法:
 1つ以上の化学療法レジメンに抵抗性であった転移性の癌で、登録時に主治医が余命6ヶ月以下と判断した成人患者386人を対象とした。プライマリアウトアムは、死亡前1週間に集中治療(心肺蘇生または人工呼吸管理、あるいはその両方)を必要としたかどうか、死を迎えた場所(ICU、病院、介護施設、ホスピス、自宅など)。セカンダリアウトカムは生存期間、ホスピス利用の遅れ(ホスピス利用期間が死亡前1週間以内であったケース)、希望した場所で死亡したかどうか、とした。

結果:
 本研究に登録してから死亡するまでの期間の中央値は4.0ヶ月であり、登録時に化学療法を受けていたのは全体の56.0%(386人中216人)であった。化学療法群では非化学療法群と比べ若年者、既婚者、保険加入者、高学歴の患者が多く、PSやQOL、身体機能、精神的健康度が高かった。しかし、化学療法群では非化学療法群と比べ患者自身が末期癌であるとの認識が不足しており、死をどのように迎えるか主治医と相談したことのある患者は少なかった。
 傾向スコアで調整した場合、化学療法を行うことは死亡前1週間のCPR・人工呼吸管理・あるいはその両方(14% vs. 2%、調整後リスク差10.5%、95%信頼区間5.0~15.5%)および経管栄養の施行(11% vs. 5%、調整後リスク差7.1%、95%信頼区間1.7~12.5%)に有意に関連していた。さらに、ホスピス利用の遅延(54% vs. 37%、調整後リスク差13.6%、95%信頼区間3.6~23.6%)にも有意に関連していた。調整後のCox比例ハザード解析によれば、生存期間は両群間で同等だった(ハザード比1.11、95%信頼区間0.90~1.38)。
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(文献より引用)

 化学療法群は非化学療法群と比較してICUで死亡する頻度が高く(11% vs. 2%、調整後リスク差6.1%、95%信頼区間1.1~11.1%)、自宅で死亡する頻度が低かった(47% vs. 66%、調整後リスク差-10.8%、95%信頼区間-1.0~-20.6%)。化学療法群では非化学療法群と比較して希望場所で死亡する頻度が少なかった(65% vs. 80%、調整後リスク差-9.4%、95%信頼区間-0.8~-18.1%)。

結論:
 終末期癌患者における化学療法はCPRや人工呼吸管理の施行頻度を上昇させ、ICUで死亡することが多くなる。


by otowelt | 2014-03-23 00:16 | 肺癌・その他腫瘍

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