メタアナリシス:小児に対する吸入ステロイド薬が成長速度の減少に与える影響

e0156318_16573653.jpg コクランから、吸入ステロイド薬(ICS)と小児の成長に関するメタアナリシスです。線形成長速度という翻訳で正しいのでしょうか。
 学会もステートメントを出しておりますが、「ICSは適切に使用される場合、乳幼児を含めて多くの喘息患児にリスクを上回る利益をもたらす」というのが正しい見解だろうと私は思います。

Zhang L, et al.
Inhaled corticosteroids in children with persistent asthma: effects on growth.
Cochrane Database Syst Rev. 2014 Jul 17;7:CD009471.


背景:
 遷延性の気管支喘息の小児において吸入ステロイド薬(ICS)はガイドラインにおいて第一選択の治療法に位置付けられている。ICSは小児に安全とされているが、潜在的にこの使用が成長に悪影響を与える可能性が懸念されている。

目的:
 ICSが遷延性気管支喘息の小児の線形成長に与える影響を調べ、その潜在的影響を調整する因子(ICSの種類、用量、曝露期間、吸入デバイス、年齢、疾患重症度、コンプライアンスなど)を探索すること。

方法:
 われわれはthe Cochrane Airways Group Specialised Register of trials (CAGR)を検索した。これにはCENTRAL, MEDLINE, EMBASE, CINAHL, AMED, PsycINFOが含まれる。検索は2014年1月に実施された。
 並行群間ランダム化比較試験においてICSの使用とプラセボや非ステロイド治療薬を比較した研究を適格基準とした。吸入治療は最低3ヶ月行われたものと定義した。患者は遷延性の気管支喘息患者で18歳未満の小児を対象とした。
 2人の独立した著者がこの研究の選定を行い、データを抽出した。その後、the Cochrane statistical package RevMan 5.2とStata version 11.0のソフトを用いてメタアナリシスを行った。メタアナリシスに際してランダム効果モデルを用いた。われわれは事前にサブグループ解析を計画し、先述の影響を及ぼすと考えられる因子を調べた。

結果:
 25試験、8471人(5128人がICS治療群、3343人がコントロール群)が登録された。
 ICS(6種類同定:ベクロメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、フルニソリド、フルチカゾン、モメタゾン)は3ヶ月から4~6年の期間に毎日低~中用量吸入されていた。ほとんどの研究は盲検下でおこなわれており、半数の研究は20%以上のドロップアウトがあった。
 1年の治療期間において、プラセボあるいは非ステロイド治療薬と比較すると、ICSは統計学的に有意に線形成長速度を減少させ(14試験、5717人、平均差-0.48 cm/年, 95%信頼区間-0.65 to -0.30)、ベースラインからの身長の変化も同様に減少させた(15試験、3275人、平均差-0.61 cm/年 95%信頼区間-0.83 to -0.38)。サブグループ解析では6剤ICSの間に有意な差が観察された(χ²=26.1, 自由度= 5, P< 0.0001, I2=80.8%)。
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(文献より引用:forest plot)

 HFAベクロメタゾン200μg/日相当のICS用量に限定してpost hoc解析をおこなっても、差は有意に観察された。
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(文献より引用:Post hocサブグループ解析)

 サブグループ解析では、1日用量による分類(低用量vs中用量)、吸入デバイスの種類、年齢は、1年間の治療期間における線形成長に対して影響を及ぼさなかった。

 治療2年目のアウトカムでは、線形成長速度はICS群とコントロール群に差はみられなかった(5試験、3174人、平均差-0.19 cm/年, 95%信頼区間-0.48 to 0.11, P= 0.22)。
 治療3年目に入ってからは2試験のみが報告されているが、そのうちの1試験ではブデソニドとプラセボの間の線形成長速度には差はみられなかった(5.34 cm/年vs 5.34 cm/年)。ただし、もう1試験では有意に線形成長速度に影響を与えたと報告されている(平均差-0.33 cm/年, 95%信頼区間-0.52 to -0.14, P =0.0005)。
 治療終了後の成長を評価した4試験において、治療中止後成長がもとのレベルに追い付くといった報告はなかった(2~4ヶ月後アウトカム)。ある試験では、フルチカゾンの治療終了12ヶ月後に急速に成長が促進されたという報告があるが、それでもなおプラセボ群との間には0.7cmの開きを残したままであった。
 また、ブデソニド400μg/日を平均4.3年使用した小児を成人まで追跡した研究があるが、プラセボと比較して成人時身長は1.2cm低いという結果も報告されている(95%信頼区間-1.90 to -0.50)。

結論:
 軽症~中等症の遷延性気管支喘息の小児において、低~中用量のICSの定期使用は、年平均0.48cmの線形成長速度減少を引き起こし、1年の治療後にはベースラインから0.61cm低くなるという結果が得られた。この影響は、吸入デバイスや用量ではなく個々のICSの種類によって影響を受けているようである。ICSによる成長抑制は治療開始1年でもっとも顕著に影響を受け、その後の影響はゆるやかである。


by otowelt | 2014-08-04 00:12 | 気管支喘息・COPD

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