気管支鏡後の気胸に対して胸腔ドレナージは必要か?

e0156318_14441648.jpg・気管支鏡後の気胸の頻度
 気胸=胸腔ドレナージ。これは医学生でも習うことですし、下手すりゃ一般の方でも知っていることかもしれません。しかし、実は気胸に対して胸腔ドレナージが必要かどうか判断することは非常に難しい。呼吸器内科医の私も、何度も判断に迷うことがあるくらいです。
 気管支鏡による気胸の合併頻度は国地域や試験デザインによってさまざまですがおおむね0.3~1.7%程度と考えられます1)-4)。私も何を隠そう、過去に気胸をつくってしまった経験があります。びまん性肺疾患に対してアグレシッブに肺生検を頑張りすぎると気胸を起こすことがあるのです。さて、先ほどの数値を参考にして、私は患者さんに「気管支鏡による気胸の頻度は1%程度、100人に1人は起こりうる合併症である」と説明しています。ちなみに日本の呼吸器診療に即したデータでは、経気管支肺生検を受けた患者さんの0.67%に気胸を合併すると報告されています5)


・気管支鏡後の気胸に胸腔ドレナージは必須?
 さて、その1%程度に気胸が発症した場合、どのくらいの重症度かといいますと、ほとんどが胸腔ドレーンを要さない軽度の気胸です。報告によっては胸腔ドレナージ率が高い報告もあるのですが、実は虚脱率だけでは胸腔ドレナージが必ずしも必要とは言えないのが気管支鏡後の気胸。これはどういうことかといいますと、通常の気胸というのは多くはブラに穴があいて肺が虚脱します。その穴がふさがらない限りは気胸が治らないため、胸腔ドレナージを必要とすることが多いわけです。一方、気管支鏡後の気胸は、肺を生検したときに肺の末梢に穴があいたことを意味しますが、出血によって被覆されれば胸腔ドレナージを行わなくても虚脱が進行しないことがあります。あまりに虚脱率が大きいときは胸腔ドレナージが必要かもしれませんが、気管支鏡後の気胸にかぎっては一度脱気を試してみるのもよいかもしれません。特に女性の場合は胸腔ドレナージで傷がついてしまうのはかわいそうなので、私は気管支鏡後の気胸に関してはまず脱気を試しています。経過観察だけでよくなる患者さんもいるので、数日観察してみるのも手です。
 脱気は、点滴で使用するカテーテル(サーフロー、インサイト、スーパーキャスなど)を胸腔に留置し、三方括栓を使って、手動で胸腔の空気を外に出します(写真)。仰臥位で第2肋間からアプローチするのが元も安全だと思います。脱気の際、外気が胸腔に入らないように注意して下さい。肺についた傷口が出血でふさがっておれば、脱気だけで気胸は完治します。ただし、脱気だけで「ヨシッ」と判断して、夜を迎えないようにしてください。夜に虚脱が進行すれば、寝ている間に緊張性気胸になってしまうこともあります。必ず、脱気後はその日のうちに虚脱が進行しないことを確認してください。また、翌日は必ず朝一番に胸部レントゲン写真を撮影してください。
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写真. 気胸に対する脱気の手技例

・気管支鏡の気胸の同定は、検査直後の撮影でよいか?
 気胸を発症している患者さんは必ず症状を呈するだろうから、そもそも気管支鏡の後に胸部レントゲン写真なんて要らないのではという意見もあります6)。ただ、日本の呼吸器診療では胸部レントゲン写真を撮影しなくてもよいという風潮はなく、法的な観点からも処置後の胸部レントゲン写真は必須と考えられます。気管支鏡後すぐでも30分~1時間後でもいつ撮影してもよいと思います。


(参考文献)
1) Stather DR, et al. Trainee impact on procedural complications: an analysis of 967 consecutive flexible bronchoscopy procedures in an interventional pulmonology practice. Respiration. 2013;85(5):422-8.
2) Tukey MH, et al. Population-based estimates of transbronchial lung biopsy utilization and complications. Respir Med. 2012 Nov;106(11):1559-65.
3) Colt HG, et al. Hospital charges attributable to bronchoscopy-related complications in outpatients. Respiration. 2001;68(1):67-72.
4) Sinha S, et al. Bronchoscopy in adults at a tertiary care centre: indications and complications. J Indian Med Assoc. 2004 Mar;102(3):152-4, 156.
5) Asano F, et al. Deaths and complications associated with respiratory endoscopy: a survey by the Japan Society for Respiratory Endoscopy in 2010. Respirology. 2012 Apr;17(3):478-85.
6) Milam MG, et al. Immediate chest roentgenography following fiberoptic bronchoscopy. Chest. 1989 Sep;96(3):477-9.


by otowelt | 2014-11-07 00:36 | コントラバーシー

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