クリスマスBMJ:Google翻訳を医療現場で用いるのは危険?

 私も結核患者さんをたくさん診察しますので、中国人などのアジア圏の患者さんとは毎週のように接します。翻訳アプリを使って会話することもありますが、果たして会話が成立しているのか不明のことも・・・。

Sumant Patil, et al.
Use of Google Translate in medical communication: evaluation of accuracy
BMJ 2014; 349 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.g7392 (Published 15 December 2014)


概要:
 双方の言葉が通じない状態での病院受診は、患者だけでなく医療従事者にとってもゆゆしき問題である。近年、機械による翻訳が可能になり、特に検索エンジンであるGoogleが提供する翻訳ソフト(Google翻訳)はわれわれにとって身近な存在である。

 著者らは、両親が英語を話せずに通訳もいない状態でGoogle翻訳によって意思疎通をはかった事例を報告した。この経験に基づき、著者らは今回の研究を思い立った。

 10の医学的文章を選択し、それをGoogle翻訳によって26言語に翻訳し、さらにネイティブスピーカーが再度英訳することで、実際の文章との乖離を調べた。

 その結果、260の翻訳文のうち、当初の英文がおおむね正確に翻訳されていたのは150(57.7%)で、110(42.3%)は誤訳されていた。特にアフリカの精度が最も低く(45%)、アジア(46%)もそれに次いで低かった。一方、ヨーロッパは60%以上と高い傾向がみられた。Google翻訳によって最も正確に翻訳されていた文章は、「あなたの夫は他人に臓器移植をすることができます(Your husband has the opportunity to donate his organs)」で、精度は88.5%だった。反面、最も低かったのは「あなたの子どもは元気ですよ(Your child has been fitting)」で精度は7.7%だった。これはスワヒリ語に翻訳すると「あなたの子どもは亡くなりました」という重大な誤訳にいたった事例もあった。


by otowelt | 2014-12-20 01:53 | その他

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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