中等症以上の気管支喘息の小児に対するネブライザーマグネシウムは有意な臨床的効果なし

中等症以上の気管支喘息の小児に対するネブライザーマグネシウムは有意な臨床的効果なし_e0156318_1432368.jpg コクランレビューでもネブライザーマグネシウムの効果については懐疑的です(Cochrane Database Syst Rev. 2012 Dec 12;12:CD003898.)。

・マグネシウムは気管支喘息発作に本当に効果があるのか?

Alansari K, et al.
Nebulized magnesium for moderate and severe pediatric asthma: A randomized trial.
Pediatr Pulmonol. 2015 Feb 4. doi: 10.1002/ppul.23158.


背景:
 静注の硫酸マグネシウムは、中等症および重症気管支喘息に対する気管支拡張薬と全身性ステロイド治療に追加するレスキュー治療として稀に投与されることがある。われわれは、ネブライザーマグネシウムが過度のリスク上昇をもたらすことなく利益を与えることができるのではないかと仮説を立てた。

方法:
 2~14歳の中等症および重症の気管支喘息を有する小児(PRAM重症度スコア4点以上)を、通常の治療(アルブテロール・イプラトロピウムネブライザー+静注メチルプレドニゾロン)を加えた後にランダムにネブライザーマグネシウム800mgあるいはネブライザー生理食塩水(プラセボ)の治療に割り付けた。退院可能な状態になるまでの期間をプライマリアウトカムに設定した。また、PRAM重症度スコアの改善やそのほかのセカンダリアウトカムを両群で比較した。

結果:
 191人がマグネシウム群、174人がプラセボ群に割り付けられた。ベースラインの平均PRAMスコアは両群ともに同等であった。治療後2時間時点で、ネブライザーマグネシウム群は有意に血中マグネシウム濃度を上昇させた(0.85 vs 0.82 mmol/L, P = 0.001)。深刻な有害事象は観察されなかった。退院可能な状態になるまでの期間は、有意ではないもののマグネシウム群でやや短縮できた(オッズ比 1.14, 95%信頼区間0.93 to 1.40, P = 0.20、平均期間:14.7時間 vs. 15.6時間)。

結論:
 ネブライザー気管支拡張薬と全身性ステロイドにネブライザーマグネシウム治療を加えても、中等症あるいは重症の気管支喘息小児の退院までの期間を有意に短縮させることはできない。


by otowelt | 2015-02-20 00:53 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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