脳転移を有する非小細胞肺癌に対する定位放射線治療を先行しても生存期間は延長しない

脳転移を有する非小細胞肺癌に対する定位放射線治療を先行しても生存期間は延長しない_e0156318_22345052.jpg EGFR-TKIではなく、白金製剤をベースとした抗癌剤治療に限った結果です。どのタイミングでSRSを入れるのか悩ましいところですが、本研究のpopulationではそこまで大差はなさそうです。

Lim SH et al.
A randomized phase III trial of stereotactic radiosurgery (SRS) versus observation for patients with asymptomatic cerebral oligo-metastases in non-small-cell lung cancer.
Ann Oncol. 2015 Apr;26(4):762-8.


背景:
 無症候性の脳転移がある非小細胞肺癌(NSCLC)の患者において、化学療法前に脳転移を治療することで生存率が向上するかどうかは不明である。

方法:
 2008年から2013年の間にサムスン医療センターに入院した1~4個の脳転移を有する患者をラダム化比較試験に登録した。患者はランダムに化学療法前に定位放射線治療(SRS)を受ける群(49人)、化学療法を先行する群(49人)に割り付けられた。プライマリエンドポイントは全生存期間で、セカンダリエンドポントは中枢神経系(CNS)の無増悪生存期間、脳転移による症状が出るまでの期間、脳機能アウトカムとした。

結果:
 登録されたECOG PS0-1の患者の年齢中央値は58歳(29-85歳)で40%の患者が非喫煙者であった。ほとんどの患者は腺癌であり、患者の半数は脳転移が1つであった。生存期間中央値は、SRS群で14.6ヶ月(95%信頼区間9.2-20.0)、化学療法先行群で15.3ヶ月(95%信頼区間7.2-23.4)であった(P=.418)。CNS増悪までの期間に差はなかった(SRS群中央値9.4ヶ月 vs. 化学療法先行群6.6ヶ月, P=.248)。化学療法先行群では、より多くの患者が有症状へ進展したが統計学的な差はなkった(26.5% vs. 18.4%)。

結論:
 本研究は早期中止によりサンプルサイズが縮小された。数の少ない脳転移を持つNSCLC患者に対し、SRSを先行しても生存率は改善しなかった。将来的にさらに多数の患者を組み入れた研究が望まれる。


by otowelt | 2015-04-23 00:49 | 肺癌・その他腫瘍

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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