ATS/ERS合同ステートメント:COPDに関するリサーチクエスチョン その1

e0156318_23175684.jpg ATS/ERSからCOPDに関するリサーチクエスチョンの合同ステートメントが出ています。AJRCCMとERJに別々に発表されていますが、内容は同じです。
 この論文の構成は通常の原著論文とは異なり、ステートメント形式で書かれています。COPD診療に携わる人間であれば最後まで通読できるくらい興味深い内容になっていますので、呼吸器内科でCOPD診療をしておられる方々は必読と思われます。
 現在解決されていないCOPDの問題は数多くあり、そういったジレンマに焦点を当てつつ、論文はこれまでのエビデンスを解説してくれています。個人的に目に留まった部分を拾い上げていきます。4回に分けて書いてみます。

Celli BR, et al.
An official american thoracic society/european respiratory society statement: research questions in chronic obstructive pulmonary disease.
Am J Respir Crit Care Med. 2015 Apr 1;191(7):e4-e27. / Eur Respir J. 2015 Apr;45(4):879-905.


・COPDの診断
 この章ではCOPDの初期段階GOLD I期のような無症状・軽症例を本当に同定する必要があるのかどうか検証が必要であると述べられています。その理由として、GOLD I期のような軽症例は、健康な人と比較しても呼吸機能の減少がなくQOLもさして障害されていないためです1)。またそういった発症前COPDを早期に同定して治療介入することが後々の生存アウトカムを改善させるのかどうかもわかっておらず、コスト対効果は不透明であると指摘されています2)。医学が発展してしまった現代社会において、科学の進歩はどこから先が治療を要する“病気”と考えるのかの線引きを難しくしているのでしょう。

・COPDの重症度の評価
 現在、表にあるようにCOPDの予後推定スコアはたくさん存在します。近年のCODExスコアでさえ、合併症の評価が妥当性に優れた項目とは言いにくいため、困っています。最も簡便なのはADOかなと思います。
 GOLDガイドラインにも記載されていますが、過去の研究からGOLD I期では3年死亡率はたいして健常人と変わらない、GOLD II期は3年死亡率が10%くらい、GOLD III期は3年死亡率が15%くらい、GOLD IV期は3年死亡率が25%くらい、1年間の急性増悪率はどの群でも1%くらいと考えていいです。それでもなおスコアリングを追い求める研究者がいるのは、COPDというcommon diseaseが研究対象として魅力的だからかもしれません。
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(表. COPDの予後推定スコア)

 これら予後推定スコアのうち妥当なものがまだ分からないという点は、リサーチクエスチョンのステートメントとして取り上げざるを得ませんでした。


・禁煙
 電子たばこについて触れられているのが興味深いです。すでにATS/ERSから電子たばこに対するステートメントが出ていますが3)、そこまでキツい文章を書いていません。しかし今回のATS/ERSのリサーチクエスチョンステートメントでは、そもそも電子たばこに関する研究が少なく、安全性の評価がされていない現状でここまで広まっていることは懸念すべきことであると断言しています。個人的にも、禁煙効果があると誤った広告をしている業者には注意が必要だと思っています。
 また、減塩ならぬ“減煙”はダメなのか?という点についても今後研究が必要であると述べています。禁煙外来では「一気にヤメないとダメ!」と言われることが多いですが、段階的に禁煙を行うことが喫煙し続けることと比較してどうなのか、などといった細かい研究は行われていません。減煙が呼吸器症状や禁煙達成に対して有効であるという報告もあります4), 5)

(参考文献)
1) Bridevaux PO, et al. Long-term decline in lung function, utilisation of care and quality of life in modified GOLD stage 1 COPD.Thorax. 2008 Sep;63(9):768-74.
2) U.S. Preventive Services Task Force. Screening for chronic obstructive pulmonary disease using spirometry: U.S. Preventive Services Task Force recommendation statement. Ann Intern Med. 2008 Apr 1;148(7):529-34.
3) Schraufnagel DE, et al. Electronic cigarettes. A position statement of the forum of international respiratory societies. Am J Respir Crit Care Med. 2014 Sep 15;190(6):611-8.
4) Buist AS, et al. The effect of smoking cessation and modification on lung function. Am Rev Respir Dis. 1976 Jul;114(1):115-22.
5) Hughes JR, et al. Does smoking reduction increase future cessation and decrease disease risk? A qualitative review. Nicotine Tob Res. 2006 Dec;8(6):739-49.


by otowelt | 2015-05-06 01:48 | 気管支喘息・COPD

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