ATS/ERS合同ステートメント:COPDに関するリサーチクエスチョン その2

e0156318_23175684.jpg リサーチクエスチョンステートメントの続きです。

Celli BR, et al.
An official american thoracic society/european respiratory society statement: research questions in chronic obstructive pulmonary disease.
Am J Respir Crit Care Med. 2015 Apr 1;191(7):e4-e27. / Eur Respir J. 2015 Apr;45(4):879-905.


・薬物治療
 日本のCOPDガイドラインでは吸入LAMAと吸入LABAは第4版から同等の位置づけになっていますが、それまでは吸入LAMAの方が有効とされていました。
 COPDに対する治療効果として重要なのは、1.1秒量低下の抑制、2.COPD急性増悪の抑制、3.死亡率の減少、です。特に軽症例では3.が重要になります。そのためには長期かつ大規模な試験を実施しなければなりません。LAMAとLABAを比較した場合、コクランレビューではスピリーバ®とLABA各種を比較検討した結果、COPD急性増悪の減少に関してはスピリーバ®の方が勝ると結論付けられています。QOLや死亡率に関して差はないとされています1)。現時点ではLAMAよりもLABAの方が上回るという結論はありませんが、メタアナリシスはセレベント®のような昔ながらのLABAも含まれて解析されており、近年登場したインダカテロール、ホルモテロール、オロダテロールといったLABAはLAMAと同等のパワーを持つのではないかとされています。新規LABAと、LAMAを比較したメアアナリシスはなく、RCTの蓄積が望まれています。このリサーチクエスチョンのステートメントでは、新規LABAが現存のLAMAを上回る可能性がある、という旨の文章を掲載しています。
 一方、合剤であるICS+LABAは、LABAと比べてどうかというと、2014年のJAMAで報告されているように、COPDのリアルワールドにおいては有効性は合剤の方に軍配がありそうです2)
 ICS+LABAとLAMAは生存についての比較がなかなか難しく、TORCH試験とUPLIFT試験のいずれにおいても一部の患者さんには生存的な利益があるとされています。2008年にICS+LABAとLAMAを比較したランダム化比較試験がありますが、この研究では急性増悪については両群同等、QOLや死亡率については合剤の方が低かったと報告されています3)。じゃあ最初からICS+LABAの合剤でいいじゃん、という簡単な問題ではなく、このINSPIRE試験は脱落率が多く(40%くらい)、生存についてもセカンダリアウトカムとして参考指標であるため、この結果をもって合剤を推し進めるのは厳しいでしょう。また、ICSを含む吸入薬治療にはCOPD患者さんに対して細菌性肺炎の増加という有害事象がハードルになっています。
 トリプル吸入療法については重症例が対象になるので、アウトカムは生存ではなくQOLや自覚症状といった点に重きが置かれます。WISDOM試験4)においてはややトリプル吸入療法に利益はありそうですが、ダブル吸入と比較してそこまでパワーがあるかというと、微差のように思われます。

・吸入デバイスの選択
 概してCOPD患者さんの吸入手技は不良であり、これがアウトカムに大きな影響を及ぼしていることは否めません5)。新規デバイスがどんどん登場していますので、デバイスの進化のみに目を奪われると最も大事な疾患コントロールが置き去りになってしまうかもしれません。

・マクロライド
 ACCP/CTSのCOPD急性増悪予防ガイドラインでは、適切な吸入治療にもかかわらず過去1年に1回以上の中等症あるいは重症のCOPD急性増悪の既往がある中等症~重症COPD患者において、COPD急性増悪を予防するために長期間マクロライドを使用してもよいとされています6)。これはLancet Respiratory MedicineやNEJMに発表された有名な研究に基づいています7), 8)
 ただし、当然ながら感染症の治療をおこなっているわけではなく、長期的な耐性菌リスクの懸念は残ります。

・スタチン
 スタチンについては、上記ACCP/CTSガイドラインにおいても推奨されていません。これはSTATSCOPE試験に基づいています9)。ランダム化比較試験でその効果が否定されていますので、今後検証されることは少ないかもしれません。


(参考文献)
1) Chong J, et al. Tiotropium versus long-acting beta-agonists for stable chronic obstructive pulmonary disease. Cochrane Database Syst Rev. 2012 Sep 12;9:CD009157.
2)Gershon AS, et al. Combination long-acting β-agonists and inhaled corticosteroids compared with long-acting β-agonists alone in older adults with chronic obstructive pulmonary disease. JAMA. 2014 Sep 17;312(11):1114-21.
3)Wedzicha JA, et al. The prevention of chronic obstructive pulmonary disease exacerbations by salmeterol/fluticasone propionate or tiotropium bromide. Am J Respir Crit Care Med. 2008 Jan 1;177(1):19-26.
4)Magnussen H, et al. Withdrawal of inhaled glucocorticoids and exacerbations of COPD. N Engl J Med. 2014 Oct 2;371(14):1285-94.
5) Melani AS, et al. Inhaler mishandling remains common in real life and is associated with reduced disease control. Respir Med. 2011 Jun;105(6):930-8.
6) Criner GJ, et al. Executive Summary: Prevention of Acute Exacerbation of COPD: American College of Chest Physicians and Canadian Thoracic Society Guideline. Chest. 2015 Apr 1;147(4):883-93.
7) Uzun S, et al. Azithromycin maintenance treatment in patients with frequent exacerbations of chronic obstructive pulmonary disease (COLUMBUS): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet Respir Med. 2014 May;2(5):361-8.
8) Albert RK, et al. Azithromycin for prevention of exacerbations of COPD. N Engl J Med. 2011 Aug 25;365(8):689-98.
9) Criner GJ, et al. Simvastatin for the prevention of exacerbations in moderate-to-severe COPD. N Engl J Med. 2014 Jun 5;370(23):2201-10.


by otowelt | 2015-05-08 00:49 | 気管支喘息・COPD

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