ATS/ERS合同ステートメント:COPDに関するリサーチクエスチョン その3

e0156318_23175684.jpg リサーチクエスチョンステートメントの続きです。

Celli BR, et al.
An official american thoracic society/european respiratory society statement: research questions in chronic obstructive pulmonary disease.
Am J Respir Crit Care Med. 2015 Apr 1;191(7):e4-e27. / Eur Respir J. 2015 Apr;45(4):879-905.


・呼吸リハビリテーション
 ACCP/CTSガイドラインにおいては、4週間以内に急性増悪があった中等症、重症、最重症のCOPD患者において、COPD急性増悪を予防するために呼吸リハビリテーションを推奨しています1)。また、コクランレビューでも呼吸リハビリテーションが死亡率、自覚症状、QOLに有効であると評価されています2)
 しかしながら、COPD急性増悪で入院した患者に対する早期リハビリテーションは、その後の再入院を減らしたり身体機能の回復を増進させる効果はみられない。むしろ、12ヶ月時点において早期リハビリテーション群では死亡率が高いというGreeningらの報告もあります3)
 現時点ではあまり急性期のリハビリテーションは頑張り過ぎず、病態が落ち着けば呼吸器リハビリテーションを行う、というスタンスでよいと思われます。
 長期的な効果については更なる研究が望まれます。また、どのように呼吸器リハビリテーションを継続していくかという課題も残されています。日本のように外来リハビリテーションのリソースが限られている先進国ではなおさらです。

・在宅酸素療法
 一般的にCOPDによる慢性呼吸不全に対する在宅酸素療法には生存を改善するというベネフィットがあります4), 5)。しかしながら、そこまで低酸素血症がヒドくない慢性呼吸不全のCOPD患者さんに対しては生存期間を延長させる効果はなさそうです6)。極端な報告では、鼻カニューラの酸素投与がプラセボ効果の結果しかもたらさなかったという報告もあります7)
 微妙な低酸素血症の場合はどうなのか?という疑問は、近年終了したLOTT試験が解決してくれるはずです。これは、非重症のCOPD患者さんに継続的に酸素投与を行うことで死亡率や入院のアウトカムを改善させることができるかどうか検討したものです。試験登録は終了しているのですが、2015年のATSでも発表される予定はなさそうで、結果はまだ不明です。
 もちろん、COPDに対する在宅酸素療法に重要なのは、生存期間だけでなく自覚症状やQOLの改善ですが。

・肺容量減量術
 肺容量減量術はリスクの高い手術ではありますが、上葉優位の重度の気腫肺がある患者さんにおいては生存期間を延長する効果があるとされています8)。しかしながらそのコストは内科療法と比較して割に合わないほど高いとされています。また、外科手術後にエアリークが遷延する例も少なくありませんので、ハイリスクの割に・・・というのがこの肺容量減量術の位置づけのようです。
 気管支鏡的にバルブ(EWSなど)をつめて肺容量減量術をおこなう方法もありますが、エビデンスについてははっきりしておらず、肺炎やCOPD急性増悪のリスクも懸念されており、現時点では推奨されていません9)。当ブログでもELSについてはその安全性の問題が未解決である点に触れています(重度気腫肺に対する内視鏡的肺容量減量術は有効だがリスクが高い)。

・肺移植
 海外において、肺移植の30%はCOPDです。日本ではCOPDに対して肺移植が行われることは多くありません。肺移植は重症COPD患者さんに対して生存期間やQOLを向上させることがわかっています10)-12)。両肺移植については賛否両論ありますが、今後新たな研究が報告されるかもしれません。


(参考文献)
1) Criner GJ, et al. Executive Summary: Prevention of Acute Exacerbation of COPD: American College of Chest Physicians and Canadian Thoracic Society Guideline. Chest. 2015 Apr 1;147(4):883-93.
2)Puhan MA, et al. Pulmonary rehabilitation following exacerbations of chronic obstructive pulmonary disease. Cochrane Database Syst Rev. 2011 Oct 5;(10):CD005305.
3) Greening NJ, et al. An early rehabilitation intervention to enhance recovery during hospital admission for an exacerbation of chronic respiratory disease: randomised controlled trial. BMJ. 2014 Jul 8;349:g4315.
4)Report of the Medical Research Council Working Party. Long term domiciliary oxygen therapy in chronic hypoxic cor pulmonale complicating chronic bronchitis and emphysema. Lancet. 1981 Mar 28;1(8222):681-6.
5)Nocturnal Oxygen Therapy Trial Group.Continuous or nocturnal oxygen therapy in hypoxemic chronic obstructive lung disease: a clinical trial. Ann Intern Med. 1980 Sep;93(3):391-8.
6) Górecka D, et al. Effect of long-term oxygen therapy on survival in patients with chronic obstructive pulmonary disease with moderate hypoxaemia. Thorax. 1997 Aug;52(8):674-9.
7) Moore RP, et al. A randomised trial of domiciliary, ambulatory oxygen in patients with COPD and dyspnoea but without resting hypoxaemia. Thorax. 2011 Jan;66(1):32-7.
8) Fishman A, et al. A randomized trial comparing lung-volume-reduction surgery with medical therapy for severe emphysema. N Engl J Med. 2003 May 22;348(21):2059-73.
9) Sciurba FC, et al. A randomized study of endobronchial valves for advanced emphysema. N Engl J Med. 2010 Sep 23;363(13):1233-44.
10) Thabut G, et al. Determinants of the survival benefit of lung transplantation in patients with chronic obstructive pulmonary disease. Am J Respir Crit Care Med. 2008 May 15;177(10):1156-63.
11) Lahzami S, et al. Survival impact of lung transplantation for COPD. Eur Respir J. 2010 Jul;36(1):74-80.
12) Eskander A, et al. BODE index and quality of life in advanced chronic obstructive pulmonary disease before and after lung transplantation. J Heart Lung Transplant. 2011 Dec;30(12):1334-41.


by otowelt | 2015-05-09 00:18 | 気管支喘息・COPD

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