ATS/ERS合同ステートメント:COPDに関するリサーチクエスチョン その4

e0156318_23175684.jpg リサーチクエスチョンステートメントの続きです。これが最後です。

Celli BR, et al.
An official american thoracic society/european respiratory society statement: research questions in chronic obstructive pulmonary disease.
Am J Respir Crit Care Med. 2015 Apr 1;191(7):e4-e27. / Eur Respir J. 2015 Apr;45(4):879-905.


・栄養
 特に日本人のCOPDでは体重減少をきたすことが多いですが、体重減少と気流閉塞は直接的に相関しているワケではありません(もちろん予後不良因子ではありますが)1)-3)
 COPDの栄養といえば、「高脂質食」と習うことが多いでしょう。なぜ脂質が多い方がメリットがあるのでしょうか?たとえば呼吸商が高い食事(低脂質食)では多くの二酸化炭素を体外に排出しなければなりません。呼吸商を低く抑え、肺が二酸化炭素を排出する負担をできるだけ軽くするために脂質の比率を通常よりもアップさせることが重要になるというロジックです4),5)
 ただ、日本のCOPDガイドラインでは、脂質よりもタンパク・カロリーの方が重要であるような文面になっています。リンについての記載も付記されています。本ステートメントでも脂質に重きを置いた記載はありませんので、個々の栄養成分よりもカロリーの方がが重要だということでしょう。可能であれば脂質・タンパクが豊富な食事に、という理解でよいと思われます。
 ビタミンDについては、本ステートメントでは補充にアウトカム改善効果はないと書かれていますが、ビタミンDが不足した患者群では急性増悪の抑制効果があるかもしれないとMartineauらが最近報告しています6)

・終末期
 COPDの患者さんで主治医と“最期のとき”の話ができているのは、たったの30%とされています7)。当然のことですが、急性増悪の真っ最中にその話をしたところで、正常な思考回路で回答が得られるとは思えません。安定期に“最期のとき”の話ができることがどういったアウトカムに影響を及ぼすか、という研究が望ましいと記載されています。

・飛行機
 一般的に飛行機内は、高度8000フィート(2438m)くらいの水準になるよう与圧されています。COPDの患者さんでは、room airでSpO2が93%くらいだとすると、82%あたりまで低下することが知られています8)。そのため、事前に低酸素試験(高地刺激試験)といった模擬搭乗を実施することが有効とされています。厳密なテストは必須ではありませんので、平地にいるときよりも2L/分多めに酸素を流すという方法もよいかもしれません。
 たとえばJALやANAでは、国内線用は0.25~6.0L/分、国際線用は0.25~5.0L/分で酸素療法をレンタルすることもできます。自身の酸素ボンベの持ち込みも可能です。いずれにしても、医師の診断書が必要です。
 在宅酸素療法を受けている患者さんが、機内で酸素療法を安全かつスムーズに受けられるようなエビデンスの構築が望まれます。

(参考文献)
1) Landbo C, et al. Prognostic value of nutritional status in chronic obstructive pulmonary disease. Am J Respir Crit Care Med. 1999 Dec;160(6):1856-61.
2) Mostert R, et al. Tissue depletion and health related quality of life in patients with chronic obstructive pulmonary disease. Respir Med. 2000 Sep;94(9):859-67.
3) Hallin R, et al. Relation between physical capacity, nutritional status and systemic inflammation in COPD. Clin Respir J. 2011 Jul;5(3):136-42.
4) Cai B, et al. Effect of supplementing a high-fat, low-carbohydrate enteral formula in COPD patients. Nutrition. 2003 Mar;19(3):229-32.
5) Ferreira IM, et al. Nutritional supplementation for stable chronic obstructive pulmonary disease. Cochrane Database Syst Rev. 2012 Dec 12;12:CD000998.
6) Martineau AR, et al. Vitamin D3 supplementation in patients with chronic obstructive pulmonary disease (ViDiCO): a multicentre, double-blind, randomised controlled trial. Lancet Respir Med. 2015 Feb;3(2):120-30.
7) Knauft E, et al. Barriers and facilitators to end-of-life care communication for patients with COPD. Chest. 2005 Jun;127(6):2188-96.
8) Edvardsen A, et al. High prevalence of respiratory symptoms during air travel in patients with COPD. Respir Med. 2011 Jan;105(1):50-6.


by otowelt | 2015-05-10 00:42 | 気管支喘息・COPD

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