MAC症の菌種別検討:Mycobacterium chimaera(マイコバクテリウム・キマイラ)

 感染症科医・呼吸器内科医は、肺MAC症の1つとしてMycobacterium chimaeraを知っておく必要がありそうです。chimaeraは語源はギリシア神話に登場する怪物であるキマイラが語源が由来です。ラテン語でキマイラ(Chimæra, Chimaera)、ヨーロッパのいくつかの言語ではキメラ (Chimera) 、英語ではキメラ・キメイラ・カイメラ (Chimera)と呼びます。ラテン語表記であることから、「マイコバクテリウム・キマイラ」というのが妥当な発音かと思われます。

e0156318_12475020.jpg
(キマイラ:ライオンの頭と山羊の胴体、毒蛇の尻尾を持つ。Wikipediaより使用[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%A9])

 複数の遺伝子領域をシークエンスして、sequevarを新しい菌種として報告されているため、あたかも新しい菌種が出現したように捉えられがちですが、実のところは「分類が進んだだけ」なのだろうと思います。

Daniel P. Boyle, et al.
Comparison of Clinical Features, Virulence, and Relapse among Mycobacterium avium Complex Species
American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine, Vol. 191, No. 11 (2015), pp. 1310-1317.


背景:
 これまで、MAC症はM. aviumM. intracellulareで構成されてきた。しかしながら、遺伝子検索の進歩によって新しい種が見いだされつつある。MAC症の菌種ごとのリスク因子、毒性、臨床アウトカムについて調べた。

目的:
 2000~2012年に著者の施設で得られた肺の検体から分離された全MACを評価するレトロスペクティブコホート研究をおこなった。そして、MACの菌種ごとに臨床経過を調査した。

方法:
 rpoBとinternal transribed spacer(ITS)を使用したマルチローカス遺伝子解析を行い、MACを菌種ごとに区別した。臨床経過、臨床アウトカムについては診療録を参照した。

結果:
 448人から検出されたMACのうち、54%がM. avium、18%がM. intracellulare、28%がM. chimaeraだった。ATS/IDSA基準を用いたところ、M. aviumM. intracellulareM. chimaeraよりも感染の基準を満たしやすかった(それぞれ補正オッズ比2.14; 95%信頼区間1.33–3.44、補正オッズ比3.12;95%信頼区間1.62–5.99)。
 M. chimaeraに感染していた患者は、免疫抑制剤を使用している頻度が多かった(補正オッズ比2.75; 95%信頼区間1.17–6.40)。M. aviumM. chimaeraの感染は、M. intracellulareの感染と比べて再発・再感染をおこしやすかった(それぞれ補正オッズ比5.64; 95%信頼区間1.51–21.10、補正オッズ比4.47; 95%信頼区間1.08–18.53)。

結論:
 MACの菌種別の解析ではそれぞれの菌種によって臨床アウトカムが異なり、一部の菌では再発・再感染を起こしやすいことがわかった。
 

by otowelt | 2015-07-17 00:43 | 抗酸菌感染症

<< 吸入薬の廃棄方法 BeLieVeR-HIFi試験... >>