運動誘発性喘息、運動誘発性気管支攣縮、アスリート喘息について

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・運動すると喘息になる?
 運動誘発性喘息(exercise induced asthma:EIA)と運動誘発性気管支攣縮(exercise induced bronchoconstriction:EIB)という2つの用語があります。日本のガイドライン1)では、病名として前者が採用されています。じゃあEIBなんて言葉、イラナイじゃん。いえいえ、そんなことはないのです。

 実は運動時にEIAを起こす喘息患者さんは結構多いのですが、健常な人であってもEIBになることはしばしばあります。実は私も子どもの頃にEIBだったと思うエピソードがあるのです。雨の降る体育の日だったでしょうか、小学校の運動会があったんです。10月の肌寒い日の雨天決行というなかなかアグレッシブな小学校でした。全力疾走で50m走を完走した後、ヒューヒューと息が苦しくなったんです。過換気症候群ではなく、明らかに気管支が攣縮するような感じだったのを覚えています。それ以降、過度な運動をするとEIBを起こすことがありましたが、今はもう大丈夫です。

 EIAという用語は、病態としてはasthma(喘息)ではない、bronchostriction(気管支攣縮)であるという意見は海外でよく聞かれます。好酸球性気道炎症じゃない、ということですね。喘息の既往がある人で運動時に喘息症状が出ることをEIA、既往の有無を問わず運動時に喘息症状が出ることをEIBと呼びます。アメリカでは広い概念としてEIBという用語が用いられています。単純にEIBと定義すると、私の子どもの頃のように結構な頻度で一般人口に存在することが分かっています。その頻度は20%とも言われています1)

 アスリート喘息とは競技者に起こるEIBのことですが、アスリート喘息を疾患概念として独立させる必要性はなさそうです。


・EIBとアスリート喘息の診断
 EIBの診断は、運動後に1秒量が10%以上低下することを定義としています。ただ、日本の場合運動負荷しながら呼吸機能検査を行うというのはあまり現実的ではないため、ピークフロー値で代用されていることが多いように思います。ただ、アスリート喘息は別です。日本アンチドーピング機構によれば、アスリート喘息については診断基準に基づいた診断書の提出が必要になりますので注意して下さい。メサコリン吸入試験はまだ日本では普及していませんが、PC20値4mg/mLで1秒量20%以上の低下が必須です。運動誘発試験はATSと同じように1秒量が10%以上低下することと定義されています。

・EIBへの対策・治療
 アスリートの場合、EIBは症状の有無を問わず30~70%に起こると言われています。絶対数が多いということで、2013年にATSからEIBのガイドラインが出ています2)

 EIBは気道に冷たく乾燥した空気が流入することで発作が起きやすくなります。そのため、気温や湿度が低いところでの運動やトレーニングを避けること、またマスクを装着することも予防に有用です。食事療法としては、塩分の少ない食事、リコピンの摂取、アスコルビン酸の摂取などが推奨されています。

 薬物的な予防法としては、運動5~20分前のSABAの頓用が第一選択として挙げられています。SABAがイマイチだなぁとか効きにくいなぁというときには、インタール®やSAMAの使用が推奨されています。EIBのエビデンスとして豊富なのはインタール®ですが、個人的にはあまり使っていません。

 SABAを毎日のように使用しても症状が続く場合には、ICSやLABAを加えるべきとされています。ただ。確実にEIBであれば問題ないかもしれませんが、普通の喘息の場合LABA単剤治療というのは医学的にも法的にもNGかもしれません。そのため、現実的にICSかICS/LABAを加えることになります。個人的にはまずICSを選択しています。ICSを使いながら、運動前にSABAという処方例が最も多いです。以下を図示します。
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 上述のように、気温や湿度が低いところでトレーニングを避けたり、マスクを装着することが有用ですが、もっとも有効な予防法は「ウォーミングアップ」です。運動前にある程度の強度の運動でウォーミングアップアを行うと、EIBが起こりにくくなるとされています。そのため、5~10分程度のウォーミングアップを行うことで、ウォーミングアップの後1~4時間くらいはEIBが起こりにくくなるとされています(refractory period)
2), 3)

・TUE申請
 国際競技連盟から指定されているアスリートの場合は、同連盟に治療目的使用に係る除外措置(Therapeutic Use Exemptions:TUE)の申請が必要です。日本のガイドラインには、アスリートに使用が認められている薬剤が掲載されています。その表を引用します。
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(参考文献)
1) 日本アレルギー学会. 喘息予防・管理ガイドライン2015. 協和企画.
2) Parsons JP, et al. An official American Thoracic Society clinical practice guideline: exercise-induced bronchoconstriction. Am J Respir Crit Care Med. 2013 May 1;187(9):1016-27.
3) Tan RA, et al. Exercise-induced asthma: diagnosis and management. Ann Allergy Asthma Immunol. 2002 Sep;89(3):226-35; quiz 235-7, 297.
4) 日本アンチ・ドーピング機構. 医師のためのTUE申請ガイドブック2015


by otowelt | 2015-08-21 00:36 | レクチャー

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