あくびは身体からの危険信号?

e0156318_1659683.jpgあくびの意義
 漢字テストでよく登場する「欠伸」。「あくび」と読みますね。「呿呻」、「呿」とも書き ます。私は医学部に入るまで「欠神」だと思っていて、いつの間にか「失神」とごっちゃになってしまったことがあります。

 たとえ医療従事者でも、あくびの病態生理って意外に勉強したことがない人が多いですよね。呼吸器内科医を長くやっていますが、私もほとんど勉強したことがありません。調べてみると、予想通りあくび中枢は視床下部にあると言われています。自発呼吸をしているラットの視床下部室傍核にグルタミン酸などを微量注入したときに、あくび反応を誘発することができるそうで、室傍核こそがあくびの中枢なんだそうで1), 2)


あくびの役割は「覚醒」と「警鐘」
 週刊日本医事新報から鈴木先生の興味深い意見を引用します3)

 「あくびは不随意的に生じることが多いが、故意に起こす場合もある。将棋の升田名人は大事な一手を打つ前にあくびをすることで有名であった。高浜虚子も一句を詠む前にあくびをしたと言われている。ヒトに限らず、猛獣は獲物に飛びかかる前にあくびをする。このように、ヒトはあくびが脳を覚醒化することを経験的に知っているようである。

 つまり、覚醒して何かにとりかかろうというときにあくびで目を覚ますということですね。眠たいときにあくびが出るのは、覚醒しろ覚醒しろと身体がムチ打ってくれているのかもしれません。

 その反面、あくびがストレスと大きく関連していることも知られています4), 5)。ヒトも野生本能をどこかに持っています。眠ったら食われるぞ!というサバンナの野生動物よろしく、あくびによって身体に対して「眠ったらヤバイぞ!」という警告を送っているワケです。生物学的に眠気は危ないのです。現代社会で寝ているスキに襲われる可能性があるのは、スリが多発する駅の構内とか誰も通らないような路地裏とかでしょうが、そんな現代でもあくびという警告手段はしっかりと残っているのです。

 ちなみにわたしの大学時代の親友は、毎日授業の前に大きなあくびをした後に夢の世界で遊んでいたので、とてもじゃないですが彼にとってあくびが危険信号とは思えません。(笑)


薬剤性あくび
 医療従事者の方々は薬剤性肝障害、薬剤性腎障害、薬剤性肺障害、なんて言葉を耳にしたことがあると思いますが、薬剤性あくび、というものもあります。中枢に作用する薬剤、たとえばオピオイド、ベンゾジアゼピン、抗うつ薬などが薬剤性あくびと関連しているとされています6)。私は個人的に見たことはありませんが、ネタとして知っておいてもよいかもしれませんね。


(参考文献)
1) Sato-Suzuki I, et al. Stereotyped yawning responses induced by electrical and chemical stimulation of paraventricular nucleus of the rat. J Neurophysiol. 1998 Nov;80(5):2765-75.
2) Melis MR, et al. Yawning: role of hypothalamic paraventricular nitric oxide. Zhongguo Yao Li Xue Bao. 1999 Sep;20(9):778-88.
3) 鈴木郁子ら. あくびの生物学的意義と伝染機序. 第4724号(2014年 11月 8日)P56「質疑応答」
4) Thompson SB. Yawning, fatigue, and cortisol: expanding the Thompson Cortisol Hypothesis. Med Hypotheses. 2014 Oct;83(4):494-6.
5) Kubota N, et al. Emotional stress evoked by classical fear conditioning induces yawning behavior in rats. Neurosci Lett. 2014 Apr 30;566:182-7.
6) Patatanian E, et al. Drug-induced yawning--a review. Ann Pharmacother. 2011 Oct;45(10):1297-301.


by otowelt | 2015-08-27 00:53 | レクチャー

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