おさえておきたい最近の呼吸器系薬剤その1

・ウメクリジニウム臭化物/ビランテロールトリフェニル酢酸塩(アノーロ®)
 アノーロは、レルベアと同じくエリプタで吸入するLAMA/LABAの合剤です。エリプタは以下の3種類があります。個人的にはICS単剤のエリプタ製剤が欲しいのですが・・・。

 レルベア®:ICS/LABA
 エンクラッセ®:LAMA
 アノーロ®:LAMA/LABA


 アノーロ®は、COPDに対する合剤治療でカプセルが不要であるという点が高く評価できます。しかも1日1回の吸入なので、アドヒアランスの観点からも非常に素晴らしい。
 ウメクリジニウム/ビランテロールの効果を検証したランダム化比較試験が報告されています。この研究ではトラフ1秒量がチオトロピウム単剤、ビランテロール単剤と比較して合剤群で有意に改善しました。
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図. ウメクリジニウム/ビランテロールのトラフ1秒量の変化量に対する有効性(Decramer M, et al. Efficacy and safety of umeclidinium plus vilanterol versus tiotropium, vilanterol, or umeclidinium monotherapies over 24 weeks in patients with chronic obstructive pulmonary disease: results from two multicentre, blinded, randomised controlled trials. Lancet Respir Med. 2014 Jun;2(6):472-86.)
 
 COPDでLAMAとLABAを合剤にしてしまうことで、心血管系疾患のリスクが懸念されるところですが、現時点ではLAMA単剤、LABA単剤と比較して心血管系疾患のリスクを有意に上昇させるというコンセンサスはありません。おおむね安全に使用できると思います。
Rodrigo GJ, et al. A systematic review on the efficacy and safety of a fixed-dose combination of umeclidinium and vilanterol for the treatment of COPD. Chest. 2015 Aug 1;148(2):397-407.


・チオトロピウム臭化物/オロダテロール(スピオルト®)
 すでに2015年8月3日の時点でスピオルト®の商品名が申請されていますので、よほどのことがなければ間違いなく販売にこぎつけるでしょう。日本でレスピマット2剤目となるのがこのスピオルトです。海外には他にもオロダテロール単剤(ストリヴェルディ®レスピマット)やSAMA/SABA合剤(コンビベント®レスピマット)があるのですが、日本ではCOPD長期管理薬用の合剤が2剤目にラインナップされることになりました。
 オロダテロールもインダカテロールと同じように超長時間作用性β2刺激薬(ultra-LABA)に属します。実臨床上はインダカテロールのイメージと同じでよいと思います。
Roskell NS, et al. Once-daily long-acting beta-agonists for chronic obstructive pulmonary disease: an indirect comparison of olodaterol and indacaterol. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2014 Jul 31;9:813-24.

 チオトロピウム/オロダテロールの臨床試験としては、TOnado試験が良く知られています。ややこしいですが、最初の2文字が大文字です。。TOnado試験は、TOviTO試験プログラムの1つだそうです。この試験は、チオトロピウム/オロダテロール2.5/5 μgあるいは5/5 μg、チオトロピウム2.5 μgあるいは5 μg、オロダテロール5 μgを1日1回レスピマットによって52週間吸入したランダム化比較試験です。その結果、合剤治療は単剤治療と比較してトラフ1秒量および1秒量AUC0-3hを有意に改善しました。また、合剤だからといって有害事象が増えるといったことはなかったそうです。
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図. チオトロピウム/オロダテロールの1秒量に対する有効性(Buhl R, et al. Tiotropium and olodaterol fixed-dose combination versus mono-components in COPD (GOLD 2-4). Eur Respir J. 2015 Apr;45(4):969-79.)

 最もエビデンスの多いLAMAであるチオトロピウム。そして、循環器疾患に対する懸念を払拭し前へ進もうとしているレスピマット製剤。さらに時代を先取りしたLAMA/LABAの合剤。これらの融合を実現させたのがスピオルト®レスピマットです。中等症以上のCOPD患者さんにおいて、かなり人気が出る製剤になることは間違いないでしょう。ウルティブロ®、アノーロ®の三つ巴の戦いになりそうです。


・アクリジニウム臭化物(エクリラ®)
 海外ではTudorza®という名前で発売されていますが、日本ではエクリラ®という名前です。アクリジニウムというLAMAは日本ではあまり知られていませんが、ウメクリジニウムと並んで最近では海外でよく臨床試験が組まれているLAMAです。

 エクリラに使用されている台形の吸入デバイス、ジェヌエアはユニバーサルデザイン賞2015エキスパート部門、コンシューマ部門を受賞しています。モンドコレクション金賞受賞くらいスゴイことなのかどうか、よく知りません。実際に使ってみると、ジェヌエアの操作性はきわめて良好で、現存する吸入デバイスの中で一番使いやすいと思います。ボタンを押して吸ったら終わり、いやはやなんと簡単な吸入デバイスなのでしょう。操作性は良い吸入デバイスは他にもありますが、ジェヌエアは群を抜いています。

 アクリジニウムはATTAIN試験において、プラセボと比較したトラフ1秒量の改善、COPD急性増悪の抑制効果がみられています。
Jones PW, et al. Efficacy and safety of twice-daily aclidinium bromide in COPD patients: the ATTAIN study. Eur Respir J. 2012 Oct;40(4):830-6.

 また、アクリジニウムは投与6週目の標準化1秒量AUC0-24をプラセボと比較して有意に改善させています。また、チオトロピウムとの比較でも同等の効果が示されました。また、COPDの症状である喀痰、呼吸困難感、喘鳴、咳などを有意に減少させました。
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図. アクリジニウムとチオトロピウムのベースラインからの標準化1秒量AUCの変化(Beier J, et al. Efficacy and safety of aclidinium bromide compared with placebo and tiotropium in patients with moderate-to-severe chronic obstructive pulmonary disease: results from a 6-week, randomized, controlled Phase IIIb study. COPD. 2013 Aug;10(4):511-22.)

 他のチオトロピウムとの比較研究はないのかというと、たとえばアクリジニウム、プラセボ、チオトロピウムを比較したFuhrらの報告があります。30人と小規模な研究ではありますが、1秒量の改善についてはアクリジニウム、チオトロピウム双方ともにプラセボより優れていましたが、COPD症状についてはチオトロピウムよりもアクリジニウムの方がおそらく優れているだろうという結果でした。
Fuhr R, et al. Efficacy of aclidinium bromide 400 μg twice daily compared with placebo and tiotropium in patients with moderate to severe COPD. Chest. 2012 Mar;141(3):745-52.

 コクランレビューでは、QOLやCOPD急性増悪による入院の減少効果はあるとしながらも、死亡率に関しては有意な低下は現時点では観察されないと結論づけられています。
Ni H, et al. Aclidinium bromide for stable chronic obstructive pulmonary disease. Cochrane Database Syst Rev. 2014 Sep 19;9:CD010509.

 将来的にはホルモテロールとの合剤が販売されることを期待しています。海外ではすでに発売しています。


・ウメクリジニウム臭化物(エンクラッセ®)
 ウメクリジニウムは、2012年に登場した赤ちゃんLAMAです。まだまだ歴史が浅いのです。専門家の間では「梅栗(ウメクリ)」と呼んでいます。・・・・・・ウソです。
Donohue JF, et al. A randomized, double-blind dose-ranging study of the novel LAMA GSK573719 in patients with COPD. Respir Med. 2012 Jul;106(7):970-9.

 日本ではウメクリジニウムとビランテロールの合剤であるアノーロ®が先行販売されていたこともあり、エンクラッセ®は販売当初から長期処方ができます。同一デバイスのアノーロ®と合わせてアドヒアランスの向上にはもってこいの薬剤です。同じエリプタということもあって、エンクラッセ®→アノーロ®とステップアップしやすいでしょう。

 さて、ウメクリジニウムの臨床試験でおさえておきたいのは、中等症以上のCOPD患者さんを対象としたウメクリジニウムとプラセボの比較試験です。この試験では、12週間にわたってトラフ1秒量やSGRQスコアを改善させたことが報告されています。
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ウメクリジニウムによるトラフ1秒量の変化(Trivedi R, et al. Umeclidinium in patients with COPD: a randomised, placebo-controlled study. Eur Respir J. 2014 Jan;43(1):72-81.

 チオトロピウムとの比較についてはウメクリジニウム/ビランテロールの有効性を示したLancet Respiratory Medicineに報告されたDecramerらの研究がよく用いられていますが、トラフ1秒量も加重平均1秒量もチオトロピウムと比較して少なくとも下回っていることはありません(優越性でもありません)。
Decramer M, et al. Efficacy and safety of umeclidinium plus vilanterol versus tiotropium, vilanterol, or umeclidinium monotherapies over 24 weeks in patients with chronic obstructive pulmonary disease: results from two multicentre, blinded, randomised controlled trials. Lancet Respir Med. 2014 Jun;2(6):472-86.

 他のCOPDに使われているLAMAと同様に、チオトロピウムには臨床的に遜色ない薬剤と考えてよいと思います。
Segreti A , et al. Umeclidinium for the treatment of chronic obstructive pulmonary disease. Expert Rev Respir Med. 2014 Dec;8(6):665-71.


ニボルマブ(オプジーボ®)
 これまで肺扁平上皮がんに対する有効な治療選択肢は限られていました。切れ味がよいとされるドセタキセルが無効になってしまうと、なかなかガツンと効く抗がん剤がないのが現状でした。オプジーボは、PD-1 とPD-1 リガンドの経路を阻害する免疫チェックポイント阻害剤です。optimal(最適な)+ PD-1 + nivolumab(一般名)から命名されたそうです。

 ニボルマブは、世界初のヒト型抗ヒトPD-1 モノクローナル抗体として悪性黒色腫に対して有効性が示されました。日本でも2014年7月に発売されています。アメリカでは2015年3月に、肺扁平上皮がんに対して保険適応が追加承認されました。

 肺扁平上皮がんに対するニボルマブの有効性についてはCheckMate-017試験が有名です。チェックメイトというネーミングはなかなか目を引きますね・・・。この試験では、肺扁平上皮がんの患者さん272人をニボルマブ3 mg/kgを2週間ごとに投与する群と、ドセタキセル75mg/m2を3週間ごとに投与する群にランダムに割り付けたものです。その結果、全生存期間の中央値は、ニボルマブ群9.2か月(95%信頼区間7.3~13.3)、ドセタキセル群6.0か月(95%信頼区間5.1~7.3)でした。また、1年の時点での全生存率はニボルマブ群42%(95%信頼区間34~50)に対して、ドセタキセル群24%(95%信頼区間17~31)でした。奏効率は、ニボルマブ群20%、ドセタキセル群9%でした(p = 0.008)。PD-1リガンドの発現の有無は、予後や効果を予測する因子ではありませんでした。
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図. 肺扁平上皮がんに対するニボルマブとドセタキセルの生存(Brahmer J, et al. Nivolumab versus Docetaxel in Advanced Squamous-Cell Non-Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med. 2015 Jul 9;373(2):123-35.

 第16回世界肺癌学会において18か月の生存率のデータが公表されていますが、やはりドセタキセルよりも良好であることが示されています。CheckMate-063試験のデータとともに表に提示します。
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表. 肺扁平上皮がんに対するニボルマブの生存率(ブリストル・マイヤーズ株式会社ウェブサイトより引用)


アレクチニブ(アレセンサ®)
 アレセンサ®は、2014年9月に日本で販売されたザーコリに引き続く2番目のALK阻害薬です。第2世代ALK阻害薬として認識されていますが、海外では第2世代ALK阻害薬と言えばセリチニブの方が有名のようです。日本ではまだセリチニブは販売されていません。

 第2世代ALK阻害薬という名の通り、基本的にアレクチニブはクリゾチニブが無効になった場合にスイッチすることで一定以上の奏効が期待できます。
Seto T, et al. Anti-Tumor Activity of Alectinib in Crizotinib Pre-Treated ALK-Rearranged NSCLC in JP28927 Study. Annals of Oncology 2014;25(suppl 4): iv426-70.

 クリゾチニブ耐性になった患者さん122人に対するアレクチニブの有効性を解析した第2相試験では、客観的奏効率は50%、疾患制御率は79%、コホート内の無増悪生存期間は8.9か月と報告されています。このうち脳転移を有する84人の解析では、疾患制御率は83%でした。
Ou S, et al. Efficacy and safety of the ALK inhibitor alectinib in ALK+ non-small-cell lung cancer (NSCLC) patients who have failed prior crizotinib: an open-label, single-arm, global phase 2 study (NP28673). J Clin Oncol 33, 2015 (suppl; abstr 8008)

 クリゾチニブ耐性のALK陽性肺癌に対して、特に中枢神経系に転移を有する場合にアレクチニブが有効であるとする報告は2014年にも報告されています。
Gadgeel SM, et al. Safety and activity of alectinib against systemic disease and brain metastases in patients with crizotinib-resistant ALK-rearranged non-small-cell lung cancer (AF-002JG): results from the dose-finding portion of a phase 1/2 study. Lancet Oncol. 2014 Sep;15(10):1119-28.

 クリゾチニブが無効になった場合、第2世代のALK阻害薬にスイッチするのか白金製剤を用いた化学療法に移行するのかコンセンサスはありませんが、中枢神経系の転移巣の増悪がある場合、アレクチニブにスイッチしてもよいかもしれません。


<補足:セリチニブ>
 セリチニブもアレクチニブと同じく第2世代ALK阻害薬で、海外ではこちらの方が有名です。アレクチニブと同じく、L1196M変異、G1269A 変異といったクリゾチニブ耐性の肺腺癌に対して有効とされています。半数近くにクリゾチニブ既治療例を含む集団でもかなり奏効率が高かったことが注目されました。
Kim DW, et al. Ceritinib in advanced anaplastic lymphoma kinase (ALK)-rearranged (ALK+) non-small cell lung cancer (NSCLC): Results of the ASCEND-1 trial (abstract 8003). 2014 American Society of Clinical Oncology (ASCO) meeting.


→ おさえておきたい最近の呼吸器系薬剤その2 へ続く 
 URL:http://pulmonary.exblog.jp/23696138/


by otowelt | 2015-09-21 08:49 | その他

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