吸入ステロイド薬は肺癌を減らさない
2015年 12月 22日
吸入ステロイド薬(ICS)は、肺癌のリスクを下げるのではないかというのは呼吸器内科医にとって意見の分かれている問題です。メタアナリシスは今のところありません。
・ICSが肺癌のリスクを減らすという報告:Respir Med. 2013 Aug;107(8):1222-33. (コホート内症例対照研究:韓国)、Am J Respir Crit Care Med. 2007 Apr 1;175(7):712-9.(前向きコホート研究:アメリカ)、Respir Med. 2009 Jan;103(1):85-90. (後ろ向きコホート研究:イギリス)
・ICSが肺癌のリスクを減らさないという報告:Ther Clin Risk Manag. 2015 Mar 26;11:489-99. (人口ベースコホート研究:台湾)
台湾から2つ目の報告です。
Jian ZH, et al.
The use of corticosteroids in patients with COPD or asthma does not decrease lung squamous cell carcinoma.
BMC Pulm Med. 2015 Dec 3;15:154. doi: 10.1186/s12890-015-0153-5.
背景:
気管支喘息およびCOPDは遷延性の気道炎症性疾患であり、肺癌の罹患と関連している。この研究の目的は、ICS・経口ステロイド(OCS)が肺扁平上皮癌(SqCC)のリスクと関連しているかどうか調べたものである。
方法:
これは台湾におけるコホート内症例対照研究である。気管支喘息あるいはCOPDと2003~2010年に新規に診断された患者情報をデータベースから抽出した。登録後、SqCCと診断された患者を“症例”として定義した。それぞれの症例について、4人のコントロール患者を設定した。
結果:
167万人余りの対象者から、793人のSqCC患者と3172人のコントロール患者が登録された。高用量ICSおよび低用量ICSを受けている男性においてSqCCのオッズ比はそれぞれ2.18 (95%信頼区間1.56-3.04)、1.77 (95%信頼区間1.22-2.57)だった。同様に、低用量・高用量OCSを投与されている男性では、オッズ比はそれぞれ1.46 (95%信頼区間1.16-1.84)、1.55 (95%信頼区間1.22-1.98)だった。しかしながら、女性ではこのリスクは観察されなかった。ステロイドが直近で増量されていた患者はSqCCのリスクが高かった。特に男性において、そのSqCCのリスクは高用量ICS+OCSで8.08(95%信頼区間3.22-20.30)、高用量ICSで4.49(95%信頼区間2.05-9.85)、高用量OCSで3.54(95%信頼区間2.50-5.01)と高かった。女性では高用量OCSによるSqCCリスクはオッズ比6.72(95%信頼区間2.69-16.81)であった。
結論:
気管支喘息あるいはCOPD患者においてステロイドはSqCCを減らさなかった。直近でステロイドが増量されていると、むしろSqCCのオッズ比は高くなった。
・ICSが肺癌のリスクを減らすという報告:Respir Med. 2013 Aug;107(8):1222-33. (コホート内症例対照研究:韓国)、Am J Respir Crit Care Med. 2007 Apr 1;175(7):712-9.(前向きコホート研究:アメリカ)、Respir Med. 2009 Jan;103(1):85-90. (後ろ向きコホート研究:イギリス)
・ICSが肺癌のリスクを減らさないという報告:Ther Clin Risk Manag. 2015 Mar 26;11:489-99. (人口ベースコホート研究:台湾)
台湾から2つ目の報告です。
Jian ZH, et al.
The use of corticosteroids in patients with COPD or asthma does not decrease lung squamous cell carcinoma.
BMC Pulm Med. 2015 Dec 3;15:154. doi: 10.1186/s12890-015-0153-5.
背景:
気管支喘息およびCOPDは遷延性の気道炎症性疾患であり、肺癌の罹患と関連している。この研究の目的は、ICS・経口ステロイド(OCS)が肺扁平上皮癌(SqCC)のリスクと関連しているかどうか調べたものである。
方法:
これは台湾におけるコホート内症例対照研究である。気管支喘息あるいはCOPDと2003~2010年に新規に診断された患者情報をデータベースから抽出した。登録後、SqCCと診断された患者を“症例”として定義した。それぞれの症例について、4人のコントロール患者を設定した。
結果:
167万人余りの対象者から、793人のSqCC患者と3172人のコントロール患者が登録された。高用量ICSおよび低用量ICSを受けている男性においてSqCCのオッズ比はそれぞれ2.18 (95%信頼区間1.56-3.04)、1.77 (95%信頼区間1.22-2.57)だった。同様に、低用量・高用量OCSを投与されている男性では、オッズ比はそれぞれ1.46 (95%信頼区間1.16-1.84)、1.55 (95%信頼区間1.22-1.98)だった。しかしながら、女性ではこのリスクは観察されなかった。ステロイドが直近で増量されていた患者はSqCCのリスクが高かった。特に男性において、そのSqCCのリスクは高用量ICS+OCSで8.08(95%信頼区間3.22-20.30)、高用量ICSで4.49(95%信頼区間2.05-9.85)、高用量OCSで3.54(95%信頼区間2.50-5.01)と高かった。女性では高用量OCSによるSqCCリスクはオッズ比6.72(95%信頼区間2.69-16.81)であった。
結論:
気管支喘息あるいはCOPD患者においてステロイドはSqCCを減らさなかった。直近でステロイドが増量されていると、むしろSqCCのオッズ比は高くなった。
by otowelt
| 2015-12-22 00:31
| 肺癌・その他腫瘍