クリスマスBMJ:ゾンビの疫学、治療、予防

e0156318_10323428.jpg クリススマスBMJの6本目です。
 ゾンビの総説を意訳しています。zombificationという言葉に笑ってしまいました。

Tara C Smith.
Christmas 2015: Infection Control
Zombie infections: epidemiology, treatment, and prevention
BMJ 2015; 351 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h6423 (Published 14 December 2015)


背景:
 ゾンビは医療現場の一部でよくみられるようになってきた。ゾンビ専門家のMatt Mogk は、ゾンビの診断基準を以下の3つとしている。1.ヒトの死体に活力が与えられたもの、2.容赦なく攻撃的であること、3.生物学的に感染すること、である。しかしMogkはこの定義はレイジゾンビの認知によって変わってきたと言う。レイジゾンビとは、感染しているが生存している状態を指す。ゾンビの生物学的知見と疫学について記載したい。

歴史:
 ハイチ人にみられたゾンビ事例がもっとも詳しく記述されている。ブードゥー教にまつわるものが有名(1968年にアウトブレイクした事例[ナイト・オブ・ザ・リビングデッド][写真]がある)。現在ではこうした宗教にからむゾンビ発症例は少ないとされており、近年は咬傷によって感染する例が多い。
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(文献より引用:1968年のアウトブレイク)

 Solanumウイルスが最も病原微生物として検討されている。致死率は100%とされている。近年の都市化によってこうしたウイルスが人間界にも侵入してきたため、ゾンビ化例が増えているものと思われる。しかし、アメリカではこのウイルスによるアウトブレイクは示されていない。Trixieウイルスはペンシルヴァニアでの事例が報告されている。2010年にアイオワ州でもアウトブレイクがみられた。摂食だけでなく、空気感染の可能性についても示唆されている。このアウトブレイクは軍の介入によって鎮静化がはかられたものの、現在も感染者は存在するものとみられている。2002年にレイジゾンビのアウトブレイクがイギリスでみられている(※レイジゾンビについては上述)。これはエボラウイルスに由来するものである。秒単位で感染性が確認され、この事例では国境封鎖を余儀なくされている。ほとんどのレイジゾンビは餓死したが、無症候性のキャリアも確認されている。

症状:
 潜伏期間はさまざまであるが、症状は一様である。レイジゾンビを除くと一般的には死亡している状態だが、凶暴であり、また人肉を喰らう。歩行はふらついており、うめき声をあげることもある。また、皮膚は腐敗することもある。例外的に知能が高いゾンビも存在し、肉を食べないこともある。

原因と伝播:
 ほとんどが咬傷によって感染する。ヒトヒト感染が多いが、昆虫や動物からの感染例もある。蚊から感染したという報告もある。ウイルスに関しては上述の通りだが、他にもエルシニアや冬虫夏草などの原因も報告されている。

治療:
 ゾンビを発症すると社会破壊性のある症状を呈することが多いため、治療については報告が不足している。現時点でゾンビ発症に関する病原微生物の情報が限られており、ワクチンについてはどの検査室でも作られていない。ワクチンの開発によってゾンビの伝播を予防することができるだろう。さらなる研究が望まれる。


by otowelt | 2015-12-16 04:15 | その他

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