クリスマスBMJ:アルカンシエルの呪いは存在するか?

 クリスマスBMJ、8本目です。
 「アルカンシエルの呪い」とは、Wikipediaによれば『世界選手権(特に男子エリートロードレース)で優勝した選手が、翌年には大きく成績を落とすというケースが少なくないほか、なぜかレース中の落車事故やメカトラブルが頻発したり、歴代の優勝者は私生活で家庭不和や事故、病気に罹患するなどのトラブルに見舞われていることなどから、俗に自転車業界では「アルカンシエルの呪い(英語: Curse of the rainbow jersey、フランス語: Malédiction du maillot arc-en-ciel)」というジンクスがまことしやかに噂されている』と書かれています。
e0156318_16331290.jpg
(写真:アルカンシエル[Wikipediaより引用])

Thomas Perneger.
Christmas 2015: All in the Mind
Debunking the curse of the rainbow jersey: historical cohort study
BMJ 2015; 351 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h6304 (Published 14 December 2015)


目的:
 自転車の世界選手権の現行チャンピオンが勝てなくなるという「アルカンシエルの呪い」(curse of the rainbow jersey)の機序を理解すること。

方法:
 ヒストリカルコホート研究。1965年から2013年の間に、世界選手権自転車競技大会ロードレースあるいはジロ・ディ・ロンバルディアで優勝したプロ自転車選手を登録した。選手が優勝した年をyear 0とし、その後2年(year 1, year 2[1年目だけアルカンシエル着用])のレース勝利数をアウトカムとした。以下の仮説を調べた。

・「スポットライト効果(spotlight effect)」:優勝者が負けると、大々的に取り上げられっる
・「マーク仮説(marked man hypothesis)」:優勝者が切るアルカンシエルが派手なので、他の選手からマークされる
・「平均への回帰(regression to the mean)」:勝ちやすいシーズンの後は、勝ちにくい

※優勝者は世界戦後の1年間、アルカンシエルを着用して全てのレースに出場することが許される

結果:
 平均すると、世界選手権チャンピオンはyaer 0に5.04回勝利しており、year 1に3.96回、year 2に3.47回勝利している。一方ジロ・ディ・ロンバルディア優勝者は、それぞれ5.08回、4.22回、3.83回である。初年度が最も勝利を蓄積しやすいことが分かった(勝利比1.49, 95%信頼区間1.24-1.80)。しかし、year 1とyear 2には有意差はなかった。

結論:
 自転車の世界チャンピオンは優勝した年よりもアルカンシエルを着用した次の年の方が勝ちにくいという特徴はあったが、おそらく平均への回帰がもっとも説明のつく現象であり、呪いではないだろう。


by otowelt | 2015-12-17 06:20 | その他

<< クリスマスBMJ:現代の論文は... クリスマスBMJ:ヒト海綿状脳... >>