クリスマスBMJ:現代の論文はポジティブな言葉を使いすぎ?

e0156318_10323428.jpg クリスマスBMJ、9本目です。
 初めて書いた英語論文で「surprisingly」という言葉を使ったら、度が過ぎると言われ一蹴された経験があります。「表現バイアス」とでも呼ぶのでしょうか。
 ここまでやるなら、このクリスマスBMJの研究自体にもそういう副詞や形容詞をふんだんに盛り込んでもらいたかったですね。

Christiaan H Vinkers, et al.
Christmas 2015: The Publication Game
Use of positive and negative words in scientific PubMed abstracts between 1974 and 2014: retrospective analysis
BMJ 2015; 351 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h6467 (Published 14 December 2015)


目的:
 科学論文のアブストラクトに使われている言葉が、時代の流れでポジティブな言葉やネガティブな言葉の使い方に変化をもたらすのかどうか調べる。

方法:
 1974年~2014年にPubMedに収載された科学論文のアブストラクトにおける後ろ向き解析である。
 novel(新しい)、amazing(驚くべき)、bright(輝かしい)、innovative(革新的な)といったポジティブな単語と、detrimental(有害な)、impossible(不可能)、unsatisfactory(不満足な)、mediocre(平凡な)といったネガティブな単語をそれぞれ25単語、そのほかのニュートラルな名詞や形容詞をオグデンのベーシック英語からランダムに100抽出した。そして、オンラインの論文検索でアブストラクトからワードを検索し数えた。これら単語群が1980年からどのように変化しているかを調べた。

結果:
 1974~80年から2014年までの化学論文の単語の使用率を見ると、ネガティブやニュートラルな単語に比べ、ポジティブな単語は平均2%から17.5%へと増加していた。とくに上位の単語、robust(強固な)、novel(新しい)、amazing(驚くべき)といったものは相対的に150倍という増加をみせていた。
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(文献より引用:ポジティブな単語の変遷)

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(文献より引用:使用数の多いポジティブな単語)

 高いインパクトファクターの論文に限定したところ、これほど顕著ではないものの匹敵するほどの増加がみられていた。非英語圏の著者はポジティブな単語を使用する傾向が強かった。ネガティブな単語は、1974~1980年から2014年までの間、1.3%から3.2%へと増加していた(相対増加率2.57倍)。ニュートラルな単語やベーシック英語のランダム抽出単語には有意な増加はみられなかった。

結論:
 われわれの解析によれば、現代の科学論文はよりポジティブ・ネガティブな単語を使う傾向にあることがわかった。科学者は研究結果の陽の側面に目が行きがちである。しかし、研究の質向上に意義のあることかどうかは疑問であろう。
 

by otowelt | 2015-12-18 00:52 | その他

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