胸膜癒着術時の鎮痛薬にNSAIDsを用いても問題ない?

 NSAIDsを胸膜癒着術時に避けた方がよいという意見があることは知っていました(Interact Cardiovasc Thorac Surg. 2007;6(1):102-104.)。ただ、個人的にはあまり重視していませんでした。
 トラムセットが使えるようになりエキスパートの意見も少し変わりましたが、日本の実臨床では現在も胸膜癒着術時の鎮痛管理はNSAIDsが主流だと思います。
 胸腔ドレーン径については各々の患者数が50人で、参考程度にした方がよさそうです。個人的には12Frは用いません。なお、本研究ではアセトアミノフェンが定期内服されています。

Najib M. Rahman, et al.
Effect of Opioids vs NSAIDs and Larger vs Smaller Chest Tube Size on Pain Control and Pleurodesis Efficacy Among Patients With Malignant Pleural Effusion
The TIME1 Randomized Clinical Trial
JAMA. 2015;314(24):2641-2653.


背景:
 悪性胸水の治療に対して、NSAIDsは胸膜癒着術の効果を減弱させる可能性があり避けられている。また、細径の胸腔ドレーンは太径のものより疼痛が少ないかもしれないが、胸膜癒着術における効果が十分得られないかもしれない。

目的:
 悪性胸水の患者に対する胸膜癒着術時の疼痛および臨床的効果における胸腔ドレーンのサイズと鎮痛薬(NSAIDs[イブプロフェン]とオピオイド[モルヒネ]の比較)が与える影響を調べる。

方法:
 16のイギリスの病院において2007年~2013年にかけて胸膜癒着術を要した320人の患者を登録したランダム化比較試験である。胸腔鏡を行い24Fr胸腔ドレーンを挿入された患者206人を、オピオイド投与群(103人)あるいはNSAIDs投与群(103人)に割り付けた。また、胸腔鏡を実施していない114人を、24Fr胸腔ドレーン+オピオイド群(28人)、24Fr胸腔ドレーン+NSAIDs群(29人)、12Fr胸腔ドレーン+オピオイド群(29人)、12Fr胸腔ドレーン+NSAIDs群(28人)に割り付けた。
 胸腔ドレーンによる疼痛はVASによって1日4回評価し、胸膜癒着術の効果は3ヶ月時に判断された。何かしらの追加的胸腔内操作が必要であった場合は臨床的失敗とした。

結果:
 オピオイド群(150人)とNSAIDs群(144人)の疼痛スコアは、統計学的に有意差はなかった(平均VASスコア23.8mm vs 22.1mm、補正差-1.5mm、95%信頼区間-5.0mm~2.0mm、p=0.40)。しかし、NSAIDs群はより鎮痛薬のレスキュー使用が多かった(26.3% vs 38.1%、率比2.1、95%信頼区間1.3-3.4、p=0.003)。胸膜癒着術の失敗は、オピオイド群で30人(20%)、NSAIDs群で33人(23%)みられ、これは非劣性基準を満たした(差-3%、片側95%信頼区間-10%~∞、p=0.004[ITT])。
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(文献より引用:Fiure 2:胸膜癒着術失敗の非劣性比較)

 
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(文献より引用:Figure 4:胸膜癒着術失敗までの期間)

 疼痛スコアは、24Fr胸腔ドレーンと比べて12Frの胸腔ドレーンで有意に少なかった(平均VASスコア22.0 mm vs 26.8 mm、補正差−6.0 mm; 95%信頼区間−11.7~−0.2 mm、P = 0.04)。ただ、12Frは胸膜癒着術の失敗率の高さと関連しており(30% vs 24%)、これは非劣性基準を満たせなかった(差−6%、片側95%信頼区間−20%~∞、P = 0.14[ITT])。
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(文献より引用:Figure 3:平均VAS)

 胸腔ドレーン挿入時の合併症は12Frの方にやや多くみられた(14% vs 24%、オッズ比1.91、P = 0.20)(出血、失神、再挿入など)。全体の重篤な有害事象に差はみられなかった。

結論:
 胸膜癒着術時にオピオイドではなくNSAIDsを用いても、疼痛スコアに有意な影響はなかったが、レスキューの鎮痛薬使用は多くなった。NSAIDsは3ヶ月時点での胸膜癒着術の成功率を低下させなかった。12Fr胸腔ドレーンを留置することは、24Fr胸腔ドレーンと比べて統計学的に有意だが臨床的にはわずかな疼痛の減少をもたらし、胸膜癒着術の成功率に関して非劣性基準を満たすことはできなかった。


by otowelt | 2015-12-25 00:02 | 呼吸器その他

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