オシメルチニブ(タグリッソ®)について

 既存の感受性変異以外にもT790M変異に対して有効である第3世代EGFR-TKIとして注目されているオシメルチニブ(タグリッソ®)について少しだけ勉強してみました。この薬剤は、2016年2月に厚生労働省の二部会でセリチニブ(ジカディア®)とともに承認されました。

 オシメルチニブはEGFR-TKIで治療を受けた非小細胞肺癌の患者さんのうち、T790M変異が陽性だった127人の奏効率が61%(95%信頼区間52-70%)とAURA試験で報告されており1)、第3世代EGR-TKIとしての有効性が期待されています2)。AURA試験はオシメルチニブを20mgから240mgに増量していき、反応がみられた用量で症例を追加して拡大試験を実施した、一風変わった臨床試験です。その後の2つのAURA第2相試験(AURA延長試験とAURA2試験)でも同様の良好なデータが報告されています。
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図. 無増悪生存期間1)(文献より引用)

 別の第3世代EGFR-TKIであるロシレチニブと構造や機序は酷似しています3),4)

 オシメルチニブはT790M陽性が確認されないと使えません。各種ウェブサイトでも情報発信がさかんになっているように、これから肺癌に対して再生検を行う機会が増えるでしょう。どのタイミングで再生検を実施するのかは、いろいろな意見が出てきそうですね。

 第3世代のEGFR-TKIは、T790M陰性の症例に対しては、無増悪生存期間の観点からみれば、プラセボよりはもちろん効果的ですが、アファチニブと大差はなさそうです。

 オシメルチニブは、脳転移で再発したEGFR-TKI耐性非小細胞肺癌の患者さんに対して有効な選択肢となりうる可能性があります5)。EGFR-TKI既治療例の癌性髄膜炎合併患者さんを対象にオシメルチニブの有効性を検証しているBLOOM試験(NCT02228369)では、半数以上の患者さんに画像上の改善がみられ、その後の評価が可能な患者さんでは全員に効果が持続しているとされています。

 オシメルチニブの副作用として多いのは、これまでのEGFR-TKIと同じく、下痢、皮疹が30~50%、嘔気、食欲不振などが20%程度にみられます。下痢と皮疹については用量依存的にその頻度が上昇することが知られています。間質性肺炎の報告についても、1~3%に収束するものと考えられ、これも他のEGFR-TKIと差はなさそうです。

 オシメルチニブには既に耐性の報告があり、C797S変異が良く知られています6)。他にも、HER2遺伝子増幅、小細胞癌への形質転換など、既知の耐性も起こりえます7),8)。そのため、オシメルチニブと他のEGFR-TKIを併用することで、耐性化を回避できるのではと考える研究グループもあります。

 現在、標準治療であるプラチナダブレットとの比較(AURA3試験:NCT02151981)、第1世代EGFR-TKIとの比較試験(FLAURA試験:NCT02296125)が実施されています。

 他の第3世代EGFR-TKIとの使い分けについては不明ですが、ロシレチニブ治療後のオシメルチニブ投与でも効果を発揮する集団がいることが報告されており、EGFR-TKI耐性の治療戦略は将来複雑化しそうです9)


(参考文献)
1) Jänne PA, et al. AZD9291 in EGFR inhibitor-resistant non-small-cell lung cancer. N Engl J Med. 2015 Apr 30;372(18):1689-99.
2) Greig SL. Osimertinib: First Global Approval. Drugs. 2016 Feb;76(2):263-73.
3) Cross DA, et al. AZD9291, an irreversible EGFR TKI, overcomes T790M-mediated resistance to EGFR inhibitors in lung cancer. Cancer Discov. 2014 Sep;4(9):1046-61.
4) Sequist LV, et al. Rociletinib in EGFR-mutated non-small-cell lung cancer. N Engl J Med. 2015 Apr 30;372(18):1700-9.
5) Nanjo S, et al. High efficacy of third generation EGFR inhibitor AZD9291 in a leptomeningeal carcinomatosis model with EGFR-mutant lung cancer cells. Oncotarget. 2016 Jan 26;7(4):3847-56.
6) Planchard D, et al. EGFR-independent mechanisms of acquired resistance to AZD9291 in EGFR T790M-positive NSCLC patients. Ann Oncol. 2015 Oct;26(10):2073-8.
7) Kim TM, et al. Mechanisms of Acquired Resistance to AZD9291: A Mutation-Selective, Irreversible EGFR Inhibitor. J Thorac Oncol. 2015 Dec;10(12):1736-44.
8) Ham JS, et al. Two Cases of Small Cell Lung Cancer Transformation from EGFR Mutant Adenocarcinoma During AZD9291 Treatment. J Thorac Oncol. 2016 Jan;11(1):e1-4.
9) Sequist LV, et al. Osimertinib Responses After Disease Progression in Patients Who Had Been Receiving Rociletinib. JAMA Oncol. 2015 Dec 17:1-3.


by otowelt | 2016-03-22 00:36 | 肺癌・その他腫瘍

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