Rasmussen動脈瘤:結核性空洞に潜む出血源

●Rasmussen(ラスムッセン)動脈瘤とは
 肺動脈のびらんが原因で形成される、結核による肺空洞内の仮性動脈瘤のことを、150年前に報告した医師の名前を冠してRasmussen(ラスムッセン)動脈瘤といいます1)。結核で大喀血する例は、空洞内にこの動脈瘤が形成されていることがあります。まれな病態ですが、現在の化学療法が登場する前はこの動脈瘤の破裂が喀血死の最たるリスク因子でした。


●Rasmussen動脈瘤の形成機序
 1939年に実施された、空洞を有する結核患者さんを剖検した病理学的な検討2)では、1114人中45人(4.04%)に肺動脈瘤が観察され、とりわけ空洞に隣接する肺動脈の血管壁が脆弱化することで瘤が形成されるのではないかと考察されました。日本でも戦後間もなく結核患者さんの剖検によって同様の検討3)がなされていますが、200人中9人(4.5%)とその頻度は1939年の報告と同じ結果でした。
 全ての結核患者さんにこうした動脈瘤が形成されるわけではなく、また血痰・喀血を呈する結核患者さんもその出血源はほぼ全例で気管支動脈と考えられます。化学療法が発達した現代では肺動脈が瘤化すること自体非常にまれな現象です。
 胸部レントゲン写真のみでは肺アスペルギローマとの鑑別が難しいこともあり4)、肺結核の患者さんの空洞にポリープ様の陰影が出現すれば、胸部単純・造影CTを撮影することでRasmussen動脈瘤かどうか判断できます。

●Rasmussen動脈瘤の治療
 第一選択は、カテーテル治療です5)。永久塞栓物質を詰めてしまった方がよいとされています。
 結核患者さんで「喀血が重度だからとりあえず気管支動脈塞栓術を」というのは高確率で正しい選択なのかもしれませんが、Rasmussen動脈瘤のように気管支動脈ではなく肺動脈に病変がある可能性も忘れてはいけません。
 ただし、Rasmussen動脈瘤は気管支動脈やその他非気管支動脈とシャントがあることが大半なようで、このような例にも気管支動脈塞栓術が有効であることが多いそうです。同動脈瘤の破裂によると思われる大喀血例でも、真赤な動脈血を喀出するのがその証左です。

※岸和田盈進会病院石川秀雄院長先生のご意見を一部参考にさせていただきました。

(参考文献)
1) Rasmussen V. On haemoptysis, especially when fatal, in its anatomical and clinical aspects. Edinburgh Med J 1868; 14: 385-401.
2) Auerbach O. Pathology and pathogenesis of pulmonary arterial aneurysm in tuberculous cavities. Am Rev Tuberc 1939; 39: 99-115.
3) 星野日出男.空洞壁動脈瘤の病理組織学的研究.結核 1952; 27: 419-22.
4) Remy J, et al. Treatment of massive hemoptysis by occlusion of a Rasmussen aneurysm. AJR Am J Roentgenol. 1980 Sep;135(3):605-6.
5) Picard C, et al. Massive hemoptysis due to Rasmussen aneurysm: detection with helicoidal CT angiography and successful steel coil embolization. Intensive Care Med. 2003 Oct;29(10):1837-9.


by otowelt | 2016-10-25 00:15 | コラム:稀少呼吸疾患

<< 難治性結核患者に対する気管支バ... 失神で入院した患者の6~7人に... >>