失神で入院した患者の6~7人に1人は肺塞栓が原因

e0156318_1015674.jpg Wellsスコアって「Alternative diagnosis less likely than pulmonary embolism」の項目が結構クセモノですよね。どうとでも受け取れるし・・・。
 失神患者でD-ダイマーが上がっていたら要注意ということですが、こんなに肺塞栓ってcommon diseaseでしたっけ?

Paolo Prandoni, et al.
Prevalence of Pulmonary Embolism among Patients Hospitalized for Syncope
N Engl J Med 2016; 375:1524-1531


背景:
 失神で入院した患者の肺塞栓の頻度はあまり示されておらず、現行ガイドラインではこれらの患者において肺塞栓の診断的ワークアップに注意を払うべきとはほとんど記載されていない(Eur Heart J 2009; 30: 2631-71.、Circulation 2006; 113: 316-27.)。

方法:
 イタリアの11病院に失神で入院した患者において肺塞栓の全身ワークアップをおこなった。失神の原因が他に判明しているかどうかは問わなかった。肺塞栓の検査前確率はWellsスコアで単純化され、肺塞栓が「likely」あるいは「unlikely」かで分類された(カットオフ値4点)。「unlikely」およびD-ダイマーが陰性の患者では、それ以上の肺塞栓診断は除外された。「likely」、D-ダイマー陽性、あるいはその両方がみられる場合はCT肺血管造影あるいは換気血流シンチが行われた。

結果:
 合計560人の患者(平均年齢76歳)が本研究に登録された。肺塞栓の診断は560人中330人(58.9%)で除外された(「unlikely」およびD-ダイマー陰性)。残りの230人のうち、肺塞栓は97人(42.2%)に同定された(ゆえに133+330=463人が肺塞栓のない失神患者ということになる)。
 本コホートにおいて、肺塞栓の頻度は17.3%だった(95%信頼区間14.2-20.5%)。肺動脈本幹塞栓子あるいは葉動脈塞栓子あるいは25%以上の血流欠損像は61人に観察された。
 失神の原因が他にあると考えられた355人のうち45人に肺塞栓がみられた(12.7%)。また、失神の原因がよくわからなかった205人のうち52人(25.4%)に肺塞栓がみられた。

結論:
 肺塞栓は失神を呈して入院した患者において、6人に1人に同定される(本コホート全体の入院患者全体で見れば、7.3人に1人か)。

余談:
 ちなみにAJRCCMに最近Hestia基準の有用性について報告がありました。Hestia基準がクリアできれば外来で肺塞栓の治療をしてもよいという判断ができます(Paul L. den Exter, et al. Efficacy and Safety of Outpatient Treatment Based on the Hestia Clinical Decision Rule with or without N-Terminal Pro–Brain Natriuretic Peptide Testing in Patients with Acute Pulmonary Embolism. A Randomized Clinical Trial. American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine, Vol. 194, No. 8 (2016), pp. 998-1006. )。

<Hestia基準>
 以下の1つでも「はい」という回答であれば、患者は在宅で肺塞栓の治療をされるべきではない。
1.結構動態が安定していない?
2.血栓溶解療法あるいは塞栓摘出が必要?
3.出血リスクが高い?
4.SpO2>90%をキープするために酸素投与が必要?
5.抗凝固療法中に肺塞栓と診断された?
6.24時間を超える点滴鎮痛剤が必要なほどの疼痛がある?
7.24時間を超えて病院で治療する医学的あるいは社会学的理由がある?
8.クレアチニンクリアランスが30mL/分未満?
9.重篤な肝障害がある?
10.妊娠中?
11.ヘパリン起因性血小板減少症の既往がある?




by otowelt | 2016-10-24 00:51 | 呼吸器その他

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