本の紹介:終末期の苦痛がなくならない時, 何が選択できるのか?

 私が医学生・研修医の頃は、終末期医療において鎮静など他国の話でした。積極的に実践している病院はごくわずかだったし、緩和ケア医とは良い意味で特別天然記念物のような貴重な存在だと思っていました。しかし、今や緩和ケアは日常臨床に深く浸透し、全国のたくさんの病院で緩和ケアチームが活躍しています。そんな中、日本一有名な緩和ケア医である森田達也先生が、不可侵領域に一歩踏み込んだ本を出版された。

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 森田先生の本は何冊か持っていますが、ヒューマニティとサイエンスが頭で融合するような独特の読了感があります。誰もが中身を知りたい未開封の箱を「ちゃんと中を見ましょうよ」といとも簡単に開けてみせ、1つ1つ咀嚼して議論する。エビデンスをいくつも提示しサイエンティフィックな立場でありながら、人間味あふれるその文章は読者の倫理的苦悩すら忘れさせる温かみがある。泥臭いテーマでも、とことん議論される。

 鎮静は患者さんを死に追いやるものなのか、クロかシロか。死ぬ直前に患者さんが感じている苦痛とは何なのか、耐えがたい苦痛とは誰のための用語なのか。緩和ケアの領域に渦巻く様々な灰色のテーマを取り上げ、森田節で語りかけてきます。

 この本は、医療人としての根源を問う、心を激しく揺さぶる本です。緩和ケアの従事者だけでなく、死に立ち会うことがある医療従事者は一度は読まねばならない。

 この本の最後の文章はこう締めくくられます。「そして、死んだ後は、亡くなった人たちとまた会える世界が待っているといいなと思っている」。医学書を読んだはずなのに、本を閉じるとなぜか笑顔になっていました。



by otowelt | 2017-03-11 00:44 | その他

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