補完代替医療を受ける癌患者は死亡リスクが高い

補完代替医療を受ける癌患者は死亡リスクが高い_e0156318_1013928.png 一時期、日本でも問題になりました。特に外科手術のように生命予後に直結するケースで補完代替医療を選ぶのは、危険だと思っています。

Skyler B. Johnson, et al.
Complementary Medicine, Refusal of Conventional Cancer Therapy, and Survival Among Patients With Curable Cancers
JAMA Oncol. Published online July 19, 2018. doi:10.1001/jamaoncol.2018.2487


背景:
 補完代替医療(CM)を受けていない患者と比較した場合、CMを受けている癌患者におけるCM、標準癌治療(CCT)アドヒアランス、全生存期間の関連性についての情報は不足している。

目的:
 CMの有無ごとにCCTを受けた癌患者の全生存期間を比較すること。また、治療アドヒランスや患者特性を比較すること。

デザイン:
 国立癌データベースによる190万1815人の患者データを用いた後ろ向き観察研究である。癌種は乳癌、前立腺癌、肺癌、直腸結腸癌とし、2004年1月1日~2013年12月31日までの患者を組み入れた。患者は、年齢、臨床病期、Charlson-Deyo合併症スコア、保険種類、人種、診断時年齢、癌種によってマッチングされた。統計解析は2017年11月8日~2018年4月9日まで実施された。

曝露:
 CMは、「非医療従事者によって管理されたその他の癌治療」とされ、外科手術、放射線治療、化学療法、ホルモン療法といった少なくとも1つ以上のCCTに追加的に用いられるものとした。

主要アウトカム:
 全生存期間、治療アドヒアランス、患者特性。

結果:
 190万1815人の癌患者コホート(258人:CM群、190万1557人:コントロール群)となった。マッチング後の主要解析に用いられたのは、CM群258人(女性199人、男性59人、平均年齢56歳[IQR48-64歳])、コントロール群1032人(女性798人、男性234人、平均年齢56歳[IQR48-64歳])である。
 CMを選んだ患者は、CCT開始が遅れたわけではなかったが、外科手術(7.0% [18 of 258] vs 0.1% [1 of 1031]; P < .001)、化学療法(34.1% [88 of 258] vs 3.2% [33 of 1032]; P < .001), 放射線治療(53.0% [106 of 200] vs 2.3% [16 of 711]; P < .001), ホルモン療法(33.7% [87 of 258] vs 2.8% [29 of 1032]; P < .001)に拒否的であった。CM使用は、5年生存率の悪化と関連していた(82.2% [95%信頼区間76.0%-87.0%] vs 86.6% [95%信頼区間 84.0%-88.9%]; P = .001)。また、治療遅れや拒否を組み込まない多変量解析において、CMは独立して死亡リスクを上昇させた(ハザード比2.08; 95%信頼区間 1.50-2.90)。しかしながら、治療遅れや拒否をモデルに組み込むと、有意差は消失した(ハザード比1.39; 95%信頼区間0.83-2.33)。
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(文献より引用)

結論:
 この研究において、CMを受けている患者は追加的なCCTを拒否しやすく、死亡リスクを上昇させた。CMはCCTを拒否しやすいため、リスク上昇につながったものと考えられる。







by otowelt | 2018-07-23 00:49 | 肺癌・その他腫瘍

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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