既治療進行非小細胞肺癌に対するアテゾリズマブ vs ドセタキセル

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POPLAR試験とOAK試験のその後、です。なお、一度始めたICIをいつまで継続するのかという実診療上の問題がありますが、たとえばCheckMate153試験では1年以上継続したほうが生存期間の延長が見込めると結論づけられています(J Clin Oncol . 2020 Sep 10;JCO2000131.)。


背景:
 既治療の進行非小細胞肺癌(NSCLC)患者を対象とした抗PD-L1抗体アテゾリズマブの第II相POPLAR試験および第III相OAK試験では、ドセタキセルと比較して生存の有意な改善が示された。より長期の追跡により、アテゾリズマブの継続的な医学的利益の評価が可能になる。この研究では、両試験の最終的な全生存期間(OS)と安全性の結果が報告された。

方法:
 ランダム化比較試験であるPOPLAR試験287人(アテゾリズマブ群144人、ドセタキセル群143人)およびOAK試験1225(アテゾリズマブ群613人、ドセタキセル群612人)のデータが解析された。患者は3週間ごとにアテゾリズマブ(1200mg/body)またはドセタキセル(75mg/m2)を投与された。有効性と安全性の結果が評価された。

結果:
 POPLAR試験(OS中央値:12.6ヶ月 vs 9.7ヶ月;ハザード比0.76 [95%信頼区間0.58-1.00])およびOAK試験(OS中央値13.3ヶ月 vs 9.8ヶ月; ハザード比0.78 [95%信頼区間0.68-0.89])のいずれにおいてもアテゾリズマブ群でのOS延長が確認された。4年間のOS率は、POPLAR試験においてアテゾリズマブ群とドセタキセル群で14.8%(95%信頼区間8.7-20.8)と8.1%(95%信頼区間3.2-13.0)、OAK試験でそれぞれ15.5%(95%信頼区間12.4-18.7)、8.7% (95%信頼区間6.2-11.3)だった。アテゾリズマブ群では、PD-L1発現レベルや組織型に関係なくOSの延長が確認された。ドセタキセル群の4年時点での生存者は、ほとんどその後のICI投与を受けていた(POPLAR試験:50%、 OAK試験:65%)。また生存者のうち、ほとんどがECOG PS 0および非扁平上皮癌であり、約半数がレスポンダーだった。治療に関連したグレード3/4の有害事象は、POPLAR試験およびOAK試験のアテゾリズマブ群の4年時点での生存者のそれぞれ27%、16%に発生した。
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結論:
 POPLAR試験およびOAK試験の長期追跡調査によると、PD-L1発現レベル、組織型、またはその後のICI投与に関係なく、既治療進行NSCLC患者においてアテゾリズマブの一貫したOS延長効果を示した。アテゾリズマブに新しい安全性懸念は生じなかった。







by otowelt | 2020-11-16 00:33 | 肺癌・その他腫瘍

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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