COMPERAレジストリ:COPDにおける肺高血圧症のアウトカム

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. COPDにおける肺高血圧症

肺胞自体も破壊されているので、予後はやはり悪いですね。COPDでは診断早期から、肺血管壁の肥厚がみられることが報告されています。この初期変化は肺血管内皮細胞に起こりますが、内皮細胞は血管トーヌスに重要な役割があるため、長期的にみるとこれが肺高血圧のトリガーになっているのかもしれません。COPDでは肺胞が破壊されるにしたがって、肺血管床も減少します。ただ血管床そのものの減少は、そこまで影響度が大きくなく(予備血管床が多いため)、どちらかといえば肺動脈リモデリングのほうが影響が大きいのではと思います。



  • 概要:
■COPDにおける肺高血圧症(PH-COPD)は、十分に調査されていない臨床的課題である。PH-COPDのアウトカムを規定する要因は何かを調べた。

■第6回PH世界シンポジウムで定義された中等度~重度のPH-COPDを登録したCOMPERAレジストリ患者の特徴とアウトカムを分析し、特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)患者と比較した。

■母集団には、中等度のPH-COPD(n = 68)、重度のPH-COPD(n = 307)、IPAH(n = 489)の患者が含まれていた。PH-COPD患者は高齢で、主に男性にみられ、ホスホジエステラーゼ-5阻害剤で治療されている頻度が高かった。PH-COPD患者は、6分間歩行距離(6MWD)とWHO機能分類が不良であった。 1、3、5年での無移植生存率は、PH-COPD群よりもIPAH群の方が高かった(IPAH 94%、75%、55% vs PH-COPD 86%、55%、38%; p = 0.004)。 PH-COPDのアウトカム不良のリスク因子は、男性、6MWD低下、肺血管抵抗上昇だった。重度のPH-COPDの患者では、30m以上の6MWD改善、薬物治療開始後のWHO機能分類改善が良好なウアトカムと関連していた。
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(Kaplan-Meier曲線:文献より引用)

■PH-COPD患者は、IPAH患者よりもWHO機能分類が不良で、アウトカムも不良だった。PH-COPD群における死亡予測因子は、性別、6MWD低下、肺血管抵抗上昇だった。重度のPH-COPDの患者でPH治療の恩恵を受ける可能性もあるが、この仮説をさらに調査するためには、ランダム化比較試験が必要である。


COPDの患者さんでは、ベースに血管内皮細胞傷害や肺血管リモデリングがあることから、難治性の肺高血圧症になります。COPDと診断がついてしまうと、なかなか心エコー検査がおこなわれないため、定期的に右心系の評価をおこなうことをおすすめします。





by otowelt | 2021-04-18 00:53 | 呼吸器その他

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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