LAMに対する全胸膜被覆

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LAMに対する胸膜被覆は、たとえ嚢胞が破裂しそうになっても、カバーリングによって物理的に胸腔内に空気が漏れ出なくなるという意味合いがあります。昔はOK-432を用いて胸膜癒着術をしていた時代もありましたが、適切な管理によって長期予後が期待できる疾患であるため、一度気胸を起こした時点で胸膜被覆について検討することが多いと思います。
 


概要:
■全胸膜被覆(TPC)は、ビデオ下胸腔鏡手術において、内臓胸膜全体を酸化再生セルロース(ORC)メッシュシートで包む革新的外科手術である。TPCがリンパ脈管筋腫症(LAM)患者の気胸再発を良好に予防できることは以前に報告されている。ただし、多くのLAM患者は、TPC前にすでに胸膜癒着を要していたため、気胸再発に対するTPCの実際の有効性と予防効果は不明なままであった。

■この研究の目的は、胸部外科または胸膜癒着術の病歴がないLAM患者の気胸再発および呼吸機能に対するTPCの効果を評価することである。2003年1月から2019年9月に、気胸の最初の外科的介入として単施設でTPCを受けた52人のLAM患者のカルテを後ろ向きにレビューした。

■気胸の再発は、観察期間中27ヶ月の間に12人[片肺60人中14イベント(23.3%)]で発生した。TPC後の無再発血胸の確率は、2.5年で81.1%、5年で64.1%だった。TPC前 vs TPC後では、%VCはそれぞれ85.7%、87.2%で(p=0.535)、1秒率はそれぞれ84.6% vs 83.0%だった(p=0.667)。LAMの進行により、ラパマイシン阻害剤(mTOR阻害剤)が19人の患者(36.5%)で開始された。術後%FEV1は、mTORIを必要とした患者の方が必要としなかった患者よりも有意に低かった[68.1% vs 88.7%、P = 0.020]。TPC前後の%FEV1 /年の低下率は、mTORIを必要としたLAM患者の方がそうでない患者よりも有意に大きかった[-9.37% vs -1.94%、P = 0.029]。術後合併症は52の半胸郭のうち25(48.1%)で同定された。
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(無再発率:文献より引用)

■以上のことから、TPCはLAM患者に換気障害や重度の胸膜癒着術を引き起こすことなく、気胸の再発を防ぐことが可能と考えられる。TPCは、その有効性と安全性に基づいて、LAM関連気胸の効果的な治療オプションと言える。


気胸の再発予防はLAMに限らずCOPDにおいても極めて重要です。COPDの患者さんは胸膜癒着を繰り返すほどII型呼吸不全のリスクが少しずつ高まってくる印象です。



by otowelt | 2021-03-17 00:22 | びまん性肺疾患

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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