Rotterdam研究:β遮断薬がCOPD増悪にもたらす効果

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循環器科的な適応があるのに、COPDがあるからβ遮断薬を避けよう、などという前時代的な診療はもう鳴りを潜めていますが(Thorax. 2020 Aug 20;thoraxjnl-2019-214206.)、急性冠症候群の後、半年後にβ遮断薬を処方されていたCOPD患者は、56.6%という報告もあります(Respirology . 2020 Feb;25(2):173-182.)。

リスクが高い人に対するβ遮断薬は、その後のCOPDの入院も減少することが示されているため(EClinicalMedicine . 2019 Jan 29;7:21-26.)、私は基本的には処方するようにしています。

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さて、Rotterdam研究コホートから、心血管疾患を併発しているCOPD患者において、選択的β遮断薬の使用は増悪のリスクを減少させた、という報告です。



  • 概要
■観察研究では、β遮断薬を投与した患者のCOPD増悪の減少が報告されている。一方、心血管疾患のあるCOPD患者を除外したBLOCK COPDランダム化比較試験では、COPDの増悪が認められた。この不一致が、心血管疾患の併存によって説明できるかどうかは不明である。

■この研究では、β遮断薬の使用とCOPD増悪のリスクとの関連性が、β遮断薬使用の心血管適応がある患者とない患者で異なるかどうかを検討した。Rotterdam研究では、最初のCOPD増悪が起こるか追跡調査が終了するまでCOPD患者が追跡された。β遮断薬の心血管適応は、ベースライン時に高血圧、冠動脈疾患、心房細動、心不全の既往がある場合とした。β遮断薬の使用とCOPD増悪との関連性は、年齢、性別、喫煙、心血管疾患の発症(追跡調査中の心不全、高血圧、心房細動、冠動脈疾患)、呼吸器系薬剤、ニトログリセリン使用で補正したCox比例ハザードモデルを用いて評価した。

■合計1312人のCOPD患者(平均年齢69.7±9.2歳)が対象となった。心血管適応のある患者(n=755、平均年齢70.4±8.8歳)では、心選択的β遮断薬を現行使用していることが、COPD増悪のリスク低減と有意に関連していた(ハザード比0.69、95%信頼区間0.57-0.85)。一方、心血管疾患の適応がない被験者(n=557、平均年齢68.8±9.7歳)では、選択的β遮断薬の現在の使用はCOPD増悪のリスクの変化とは関連していなかった(ハザード比0.94、95%信頼区間0.55-1.62)。




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by otowelt | 2021-08-23 01:30 | 気管支喘息・COPD

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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